昭和最後を飾ったライダー、仮面ライダーBLACK RXの最終回「輝ける明日!」をレビュー。
話の中身を知りたくない方は、このままそっと閉じていただきたい。
「もう30年以上も前の作品だし・・・」と、おおらかな気持ちでいられる方は、このまま最後までお付き合いいただければ幸いだ。
ストーリー
前回の戦いで、ジャーク将軍をぶっ倒した南光太郎/仮面ライダーBLACK RX。
これで、崩壊の危機を迎えた自分たちの世界を捨て、50億人を地球へ移住させようと目論むクライシス帝国の地球侵攻主要メンバーは未だその姿を見せぬクライシス皇帝と監察官ダスマダー、マリバロンの3人となってしまった。
そんな時、クライシス帝国打倒のために世界各地から集まった10人の仮面ライダーたちと南光太郎の前に、クライシス皇帝の使いとしてマリバロンが現れる。光太郎を皇帝の元へ案内するため。皇帝は光太郎とサシで話し合いがしたいらしい。
心配する仲間たちだったが、光太郎は皇帝に会いに行くことを快諾する。マリバロンに連れられ、皇帝の元へと向かう光太郎。それを尾行する他のライダーと光太郎の仲間たちだが、人数が人数なので隠れ切れたものじゃない。鳩バス観光ばりにゾロゾロと向かう。
地下の秘密基地で対面したクライシス皇帝は、光太郎に”サー”の称号を与え、地球の支配者の地位を与えるという。ドラクエの竜王みたいな申し出である。
もちろんそんな申し出を受ける光太郎ではないが、それに激昂したのはマリバロン。大勢の仲間たちを倒してきた光太郎に最高の地位を与えるなど納得できないと、皇帝の前であるにも関わらず、光太郎に襲いかかる。恐ろしいまでの気迫で光太郎を後一歩まで追い詰めるが、皇帝の怒りに触れ、哀れにも消されてしまう。最後まで残った女性幹部の扱いがコレ。ブラック企業も裸足で逃げ出す勢いである。
結果的には皇帝に危ういところを救われる形となった光太郎だが、皇帝の申し出は断固却下。コレで完全に交渉決裂。崩れる地下の秘密基地。岩に押し潰される光太郎たち。
光太郎たちを倒し、「コレで50億のクライシス帝国民を救える」と、クライシス要塞で高笑いをする監察官ダスマダーだったが、その背後に忍び寄る黒い影。仮面ライダーBLACK RXだ。南光太郎は生きていた。ついに、地球とクライシス帝国の存亡をかけた最終決戦が始まる・・・。
不都合な真実
戦いの最中、ダスマダーはこの戦いの真相を光太郎に語る。
実は、崩壊寸前のクライシスの母星は、もうひとつの地球(劇中では”地球の影”といった表現を使っているが、いわゆるパラレルワールドに近いものと考えられる)。そして、崩壊に至る原因は地球の環境破壊で、その負の影響がクライシスの環境をも破壊したのだという。
そして問う。地球人の手で母星を滅ばされかけている自分たちクライシス人を、地球人に拒む資格があるのか? と。
言い淀む光太郎。めちゃくちゃ辛辣なテーマである。
本作が放映されていたのが平成元年。もう30年以上も前の作品だが、当時はバブル景気の真っ只中。誰も彼もが収入は上がり続けると盲信し、湯水のようにお金もモノも消費していた時代で、経済成長のためなら地球環境に負荷をかけることなど厭わないような風潮があった。もちろんそれに対して警鐘を鳴らす人たちもいたけれど、ほとんどの人たちは目先の豊かさのために、そういった都合の悪いことからは目を逸らしていたのだ。
それをあえて子供たちがメインの視聴者であるはずの特撮ヒーロー番組で突きつける。親子で視聴する家庭も多かったことだろう。コレって完全な教育番組である。
仮面ライダーV3/風見志郎を演じていた宮内洋さんが「特撮ヒーロー番組とは、子供たちに正義の心を教える教育番組に他ならない」という言葉を残しているのだが、まさにこのこと。当時のツケを払うように、地球環境問題を眼前に突きつけられている今だからこそ、身につまされるようなテーマである。
決着。そして・・・
地球人の罪を目の前に突きつけられるも尚、ダスマダーを倒す光太郎の前にクライシス皇帝が立ちはだかる。監察官ダスマダーの正体は、クライシス皇帝の一部だったのである。
いつもの岩場で、ついにクライシス皇帝を倒す光太郎。
「人間どもが地球を汚せば、新たな怪魔界(もうひとつの地球。クライシス人の住む母星のあるパラレルワールドのこと)が生まれ、地球を襲うであろう!」
皇帝最後の言葉である。よくある悪者の最後の言葉、などと一蹴してはいけない。地球侵略を謀る異星人は現れなくとも、地球人の生活を一変させるような環境の変化が起こり得ることを我々は既に目の当たりにしているのだから。
そしてタイムリミットを迎え、消滅するもうひとつの地球。ついに地球に平和が戻った。
我が子を守るため、ジャーク将軍に命を奪われてしまった佐原俊吉(仮面ライダーではおなじみの”おやっさん”的存在だった人)とその妻・唄子の墓に手を合わせた光太郎と仲間たちは、再会する日を胸に、それぞれの新しい道へ向かって旅立っていく・・・。
とても爽やかなエンディングだが、しかしその影には、生きたくても生きられなかった50億人のクライシス人の犠牲もあったということは忘れてはならない。ただの空想ドラマではなく、コレは何処かで実際にあるような現実に根ざした物語なのである。
子供時代に見ていたよ、という方も、大人になった今だからこそ感じる部分はきっとあるはず。是非とも見返して欲しい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /