2022年10月22日放送『ウルトラマンデッカー』第15話「明日への約束」(監督:武居正能 脚本:根元歳三)をレビュー
正しい特撮ヒーローの姿がここにある。
そんなことを久々に感じさせられたエピソードだ。
信じていた人に裏切られ、敗北し、絶望しそうになりながらも、人々のため、地球のために立ち上がる主人公。
これ以上ないほどベタだが、これ以上ないほど胸熱な展開でもある。特撮はこうでなくちゃいけない。
第1話からひっそりと張られていた伏線も回収され、デッカーは新たな力をも得る。
まごう事なき神回。
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第15話のキャストをご紹介する。
以下で使用している画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。
アスミ カナタ
松本大輝
キリノ イチカ
村山優香
リュウモン ソウマ
大地伸永
カイザキ サワ
宮澤佐江
ムラホシ タイジ
黄川田雅哉
アガムス
小柳 友
未来人デッカー
谷口賢志
レリア
藤山由依
未来のユザレ(回想)
豊田ルナ
ウルトラマンデッカー:岩田栄慶
テラフェイザー:岡部 暁
スフィアザウルス:高橋 舜
スフィアの真実、アサカゲの真意
謎の生命体・スフィア。
第1話で地球を覆い尽くした謎の生命体。本作のカギを握る超重要な存在であり、これまで謎に包まれていたその目的や行動パターンが明らかとなった。
宇宙を浮遊する生命体・スフィアは、文明の進んだ惑星や力のある生物を飲み込み、自らの一部とするらしい。力のある生物といえば怪獣。過去回でゴモラやネオメガスにベタベタと寄生して、そのまま意志も身体も乗っ取るようなことをしていたが、まさにそのことだろう。
そして惑星を飲み込む際は、ターゲットの惑星をバリアで包み込み、スフィアザウルスを投下。投下されたスフィアザウルスは地中に根を張り、惑星のエネルギーを吸収するという。まさに、今現在の地球の状況そのものである。
そして、スフィアザウルスが惑星のエネルギーを十分に吸収すると、バリアは収縮し、さらに巨大な本体が現れて惑星を飲み込んでしまうという。
どういった意志に基づいて、こんな行動を続けているのか? アサカゲはスフィアのことを「宇宙の摂理」だと言っていたから、スフィア自体に目的はないのかもしれない。だとすると、体内に侵入した異物を排除しようと活動する白血球のような存在なのかもしれない。しかし、誰かの手で作られた、プログラムに従って行動する人工生命体という可能性も捨てきれない。
こんな厄介なスフィアの存在を知るのは、本来は今から数百年後のことらしい。こう書くと、頭の中が疑問符だらけになると思うが、今、地球を脅かしているスフィアは、未来からやってきたということだ。
今から数百年後、宇宙へと進出した人類が遭遇するのがスフィア。そこで、他の星の人たち(その中にはアザレもいるようだ)や、もう一人のウルトラマンと共に戦うことになるのだとか。
その戦いの中、ひとつの惑星がスフィアのターゲットにされてしまう。
その惑星の名はバズド。アサカゲ ユウイチロウと名乗っていた男の故郷である。彼の本当の名はアガムスというらしい。未来から来た宇宙人だった、というわけだ。
そして、地球にスフィアを引き連れてきたのが彼。
時間も宇宙も超えて、地球を滅ぼすためにやってきた。彼を突き動かしたのは、一言でいえば“逆恨み”である。
彼は地球人に故郷を滅ぼされた、と言っている。だが、明言はされていないものの、地球人がバズドを侵略しようとしたようには見受けられない。それよりは、地球人が宇宙に進出したことで始まったスフィアとの戦いにバズドが巻き込まれた、と考えるのが正しそうだ。しかも実際のところ、まだ滅んではいないらしい。バズド人たちは、今も必死の抵抗を続けているとのことだ。
だとしたら、何故彼は「滅んだ」と言っているのか? わざわざ時空移動システムまで作り上げ、過去へとジャンプし、スフィアで地球を滅ぼそうとまでするのか?
そこにはレリアという女性の存在があるようだ。
前回も謎の男がその名を口にした際、これまで見せたことのない怒りの感情を露わにしたアガムス。おそらくはその戦いの中で命を落とした女性なのだろう。大切なその女性を失ったことが、アガムスにとっては故郷を失ったのと変わらないほどの大きな喪失感だったのかもしれない。
責任
謎の男の正体。
それは、未来のデッカーだった。
ついでに、第1話でスフィアソルジャーに飲み込まれそうになったカナタにDフラッシャーを渡したのも彼だったとわかる。そういえば確かにデッカーが語りかけていた気がする。あの時には、声そのものは流れなかった。カナタがデッカーと心で会話していたようなシーンだったが、ここでこうして伏線は回収されたわけだ。
元々、男はアガムスを追いかけてくるつもりだったらしい。ところが、過去へと飛んだアガムスが、自ら時空移動システムを破壊(時限爆弾とか、そういったものだろうか?)したため、追いかけることができなくなってしまった。
そんな時、アガムスの飛んだ時代にも光が存在していることがわかった。カナタのことである。そこで、自らがそこに行く代わりにDフラッシャーだけを、直りかけの時空移動システムでカナタへと送り届けたというのだ。
そして遂には、こうして自分自身をも現在の地球へと移動することができた。ただし、システムの復旧が完全ではないのか、万全の状態ではいられないらしい。
それでも、アガムスは自分と同じ時代の人間である。「大人には責任てもんがあるんだよ」とカッコをつけて、ふらつきながらもデッカーに変身しようとする男にカナタは叫ぶ。
「わかんねえよ!」
アガムスも、男も、簡単に「命をかけて」みたいなことを口にすることにカナタは納得がいかない。
今もスフィアと戦っている同胞たちのためにも、生きて帰らなきゃダメだと熱く語るカナタのセリフが胸に突き刺さる。ベタだ。どうしようもないほどにベタだが、どうしようもないほど胸が高鳴る。
そうしてカナタは、「巻き込まれたからじゃない。俺の世界を守りたい」と、ようやく自身の意志を固める。
「こっちは俺に任せて、さっさと未来へ帰りやがれ!」と怒鳴られた男は、「ガキが・・・」と凄みを見せながらも、黙ってDフラッシャーを譲り渡すのだった。
自分たちが招いたことの責任を取ろうとする未来人と、今、この場所を守ろうとするカナタの責任感が輝きあう。
ほとばしれダイナミック
大見栄を切ってデッカーに変身したカナタだったが、テラフェイザーの力は圧倒的だ。
ミラクルタイプのトリッキーな攻撃でも、ストロングタイプの力押しも敵わない。
徐々に押し込まれ、ピンチになったカナタを、男が不思議な力で後押しする。『ドラゴンボール』で、セルに片手でかめはめ波を放った悟飯を後押しした悟空を彷彿とさせる。
その時、カナタの目の前に新たな力が現れる。
それがダイナミックタイプ。
フラッシュ、ストロング、ミラクルの3つの力を併せ持ち、シールドモードとブレードモードの2形態を持つデッカーシールドカリバーという専用武器を使うこともできる。
地球のエネルギーを吸収し続けるスフィアザウルスを切り裂き、テラフェイザーをも圧倒する。
そうして、ひとまず取り戻した平穏の時。
未来へと帰る男が、ようやく明かしたその名はデッカー。デッカー・アスミ。カナタの子孫というわけだ。
そのデッカー・アスミは「アガムスを救ってやってくれ」と言い残して去っていく。
時代を超えて続くアスミ家の物語『ウルトラマンデッカー』。新たな力を手に入れたカナタと、その仲間たちの戦いの行く末が非常に楽しみになる回だった。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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