2022年10月29日放送『ウルトラマンデッカー』第16話「君は君のままで」(監督:中川和博 脚本:皐月 彩)をレビュー
前回、アサカゲ博士が実はバズドという星から来た未来人で、スフィアを使って地球を滅ぼそうとしていることが明らかとなり、あからさまに動揺しているカナタが、チームの足を引っ張ってしまう。
空回りするカナタは立ち直ることができるのか? カナタの背中を押してくれるのは誰だ?
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第16話のキャストをご紹介する。
なお、以下で使用している画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。
アスミ カナタ
松本大輝
キリノ イチカ
村山優香
リュウモン ソウマ
大地伸永
カイザキ サワ
宮澤佐江
ムラホシ タイジ
黄川田雅哉
ハネジローの声
土田 大
アガムス(回想):小柳 友
デッカー・アスミ(回想):谷口賢志
主婦:松本海希
縁側のおばあさん:青木道子
ウルトラマンデッカー:岩田栄慶
パンドン:新井宏幸
小さな怪獣
カリヤシティに現れた謎の生物。それがスピニー。
スピニー
別名:浮遊幼獣
身長:22cm
体重:410〜450g
フワフワと空中を漂う様はかわいらしく、ポケモンに登場してもおかしくないような雰囲気を持っている。
噛みつくわけでもない。体当たりくらいはするけれど、そもそも小さな生物であるため、命の危険まではない。ただ、何をするのかわからない、という住民の不安を取り除くために捕獲作戦が繰り広げられるのだが、これもみんなで虫取り網を振り回すという、至って平和なものだ。どこかの家から逃げ出したヘビやトカゲを捕まえるといった程度のもので、怪獣を相手にしているとは到底思えない。
しかし、捕獲作戦は困難を極める。何しろ、地面を這うわけでも、羽を使って飛び回るわけでもないのだ。UFOのように漂うスピニーの行動は予測が難しい。空中に静止した状態から上下左右どちらに動くかわからないためだ。
TPU職員の捕獲作戦は失敗。精鋭部隊GUTS-SELECTの登場となる。
「フォーメーション・デルタ」という仰々しい作戦名の下、カナタとイチカとリュウモンの3人が、やはり虫取り網を使ってスピニーを追い詰める。デルタの名の通り、3方向からスピニーを包囲して一斉に虫取り網を振り下ろすが、それよりも素早い動作で宙に舞うスピニー。その様子に気を取られた3人が、それぞれの頭を虫取り網で捕獲するという顛末は、いつものよくあるやつである。
悩めるカナタ
やがて事態は急変する。
逃走中のスピニーが、口から火炎を吐いたらしい。それによって、捕獲作戦は中止。駆除作戦へと切り替えられる。
フォーメーション・デルタは維持したまま、ハンドガンでの駆除作戦を試みるカナタたち。
だが、平常心をすっかり失っている様子のカナタは、迫るスピニーにトリガーを引くこともできず、棒立ち状態。
スピニーが炎を吐く。
間一髪で、その状況を救ったのはイチカ。
スピニーはそのまま何処かへ飛んで行ってしまう。
これに腹を立てたリュウモンがカナタに詰め寄る。
カナタの様子がおかしいのは、アサカゲ博士の裏切りが原因らしい。あの時のアサカゲの目が、そして、彼の母星バズドが滅びる原因は地球人だという言葉が、カナタの胸に棘のように刺さったままだったのだ。
この状態のカナタでは戦えない、と判断したリュウモンだったが、代わりに誰かを呼び寄せられるほどの時間的余裕がないことがわかる。
これまでのスピニーの経路から、目的地が判明したのだ。
それは現在、カナタたちがいる場所からそう遠くはない場所。そこには地層の裂け目があった。
その地層の裂け目からは、謎の鉱石が確認されていた。スピニーは、そこから発せられるエネルギーに引かれているようだ。鉱石も、スピニーが近づくにつれて不思議な光を放ち始めたというから、決して無関係ではないのだろう。
リュウモンは覚悟を決めたように、カナタに言葉をかける。「単純なお前が、壮大な問題について考えたところで解決には至らない。そんな時は誰かを頼れ」と。
チームの士気が上がる。
3人はスピニーを追って、地層の裂け目に辿り着く。
地層の裂け目より生まれた者
確かにそこにスピニーはいた。
しかし、イチカの目の前で、スピニーの顔が二つになる。もう、嫌な予感しかない。
銃撃する3人。弾が当たる。スピニーが力を失ったように落下する。落下した先は、地層の裂け目だ。
歓喜する3人を尻目に、地層の中から巨大な怪獣が現れる。
パンドン。真っ赤な双頭の怪獣で、初出は『ウルトラセブン』まで遡る。最終エピソードとなる第48話「史上最大の侵略(前編)」と第49話「史上最大の侵略(後編)」の2話に亘って登場する強力な怪獣だ。
パンドン
別名:双頭怪獣
身長:40m
体重:15,000t
出身地:ゴース星
『ウルトラセブン』の最後の怪獣(セブンが最後に戦った怪獣を正確に記せば「改造パンドン」となる)が、モブとして登場するあたりに時代を感じるが、強力なことは間違いない。
手塚治虫先生の『ブラックジャック』に登場した結合双生児のように左右にそっぽを向いた二つの顔が特徴的で、それぞれの口から物理法則を無視したように、真正面に向けて炎が吐き出される。
デッカーに変身したカナタは、ダイナミックタイプへとチェンジしてシールドで炎を防ぎ、そのままトドメを刺す。
今やウルトラマンでも剣や盾を持つのは当たり前になっていて、違和感しか感じないが、これは昭和ウルトラシリーズへのノスタルジーだと言われても仕方ないだろう。スポンサーからすれば、ヒーローに武器を持たせることで生まれる利益は、「昔の方が良かった」などと口ばかり達者で、売上にはほとんど貢献しないような層の意見に耳を塞ぐデメリットよりも遥かに大きいことは明らかだからだ。
深まる絆
パンドンに岩を投げつけられて命を落としたかに見えたカナタが無事な姿を見せ、イチカもリュウモンも笑顔を見せる。
カナタのサムズアップに全力で応えるイチカ。と、控えめに親指を立てるリュウモン。
リュウモンまでカナタのノリに応えたことを茶化す二人。
最初は水と油のようだったカナタとリュウモンだったが、ここに来て一気に信頼を深めている様子が窺える。二人の間を取り持つイチカも嬉しそうだ。本当に良いチームになっているな、というのが伝わってくる。
「雨降って地固まる」とは、まさにこういうことだろう。お互いを認め合っているからこそ、信じ合っているからこそ、口にできる言葉がある。どうでもいい人、信用できない人には言えないことも、このチームだったらぶつけ合える。そんな雰囲気が窺える。
実働メンバーが3人だけ、しかも全員新人の精鋭部隊という設定には、当初違和感しかなかったが、彼ら3人の成長していく様を、限られた話数の中で描こうとすれば、こういった設定にせざるを得なかったのかもしれない。というくらいには、肯定的に受け止められる『ウルトラマンデッカー』。今のところは悪くない、と思う。
これまでカナタの影響をモロに受けていたハネジローも、一度壊れたことをきっかけに、元通りの品行方正な感じになって戦線復帰したし、次回はムラホシ隊長に何か問題が降りかかる様子。まだまだ魅せてくれそうなことに期待をしている。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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