折れない心、深まる絆|『ウルトラマンデッカー』第19話感想

雷堂

2022年11月27日放送『ウルトラマンデッカー』第19話「月面の戦士たち」(監督:坂本浩一 脚本:ハヤシナオキ)をレビュー

“ウルトラシリーズ最凶の悪魔”とも呼ばれる異次元人ヤプールによって、異次元へと連れ去られたデッカー。

抜け出した先は宇宙空間。目の前には地球が見える。スフィアのバリアで覆われた地球を見つめるデッカーをスフィアソルジャーの群れが襲う。絶体絶命の状況から救い出してくれたのは、ウルトラマントリガーだった…。

ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。

目次

キャスト

ここでは第19話のキャストをご紹介する。

以下で使用している画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。

アスミ カナタ

松本大輝

キリノ イチカ

村山優香

リュウモン ソウマ

大地伸永

カイザキ サワ

宮澤佐江

ムラホシ タイジ

黄川田雅哉

マナカ ケンゴ

寺坂頼我

アスミ シロウ※画面右

小沼朝生

アスミ トキコ

夏目実幸

ハネジローの声

土田 大

ヤプールの声

菊池康弘

アガムス(回想):小柳 友

デッカー・アスミ(回想):谷口賢志

ユザレ(回想):豊田ルナ

ウルトラマンデッカー:岩田栄慶

ウルトラマントリガー:石川真之介

ギャラクトロンMK2:梶川賢司

ヤプール:桑原義樹

ゾンボーグ兵:岡部 暁 ・ 永地悠斗

月面基地の異変

ケンゴとカナタは、TPU月面基地にて再会を果たす。

ここにスフィアの巣があることがわかり、ケンゴは火星からやって来たのだという。月面基地には、廃棄されたゾンボーグ兵があちこちに転がっているだけでなく、動かなくなったキングジョーなどの強力な兵器の姿も見える。ちなみにゾンボーグ兵とは、『ウルトラマンダイナ』に登場した敵キャラである。『ダイナ』をオマージュしていると公言されている通り、『デッカー』の端々で『ダイナ』の影響を感じることができる。このあたりのことは知らなくとも問題ないが、知っていればより楽しめることは間違いない。

もしも過去作にも興味があれば、「TSUBURAYA IMAGINATION」というアプリをご紹介したい。ただし有料なので、登録を迷ったら以下の記事を読んでいただきたい。1年超もの期間、このアプリを使ってみた率直な感想をまとめてある。諸手を挙げてオススメとは言えないのが残念ではあるが、現時点でウルトラシリーズを楽しめるアプリはこれしかない、というのが実情である。

こうしてロボットが転がっている廃墟というシチュエーションだけで、次の展開が透けて見えるが、予想通り、ゾンボーグ兵たちが起き上がって襲いかかってくる。ただし自律的な行動ではなく、再び現れたヤプールによって操られているようだ。

強力なゾンボーグ兵たちを相手に苦戦するカナタとケンゴ。

力でゴリ押すだけのカナタと比べると、時折バック転などを披露するケンゴの戦いの方が見応えがある。シリーズは異なるが、『仮面ライダーフォーゼ』に出演した福士蒼汰さんや『仮面ライダー鎧武』に出演した佐野 岳さんらも、同様の身体能力を見せてくれていた。そうでない役者さんはゴロゴロと地面を転がったりしているだけなので、一際目立つ。これはバック転のできない役者さんをディスっているわけではなく、できる方がアクションの見せ場が多いということである。

最初は2人がかりで戦っていたはずのカナタとケンゴだが、徐々に一人一人の戦いとなり、ふとした隙を突かれたケンゴは、スフィアに取り憑かれ、その記憶を吸収され始める。

画像引用元:ウルトラマンデッカー

この直後に登場したヤプールもまたスフィアに取り憑かれて記憶を吸収されるのだが、そこでヤプールは自らの記憶を失ってしまう。

それに対し、デッカーに変身したカナタの手で救われたケンゴに記憶喪失の様子はない。完全に記憶を奪われる前に救助されたから、ということなのだろうか? 一瞬で記憶を失ったヤプールよりも、ケンゴの方がスフィアにとって興味深いデータを色々と持っていた、ということなのかもしれない。

こうしてウルトラマントリガーとしての記憶を奪われたことが、後々影響してくることは十分あり得る話だ。冒頭ではデッカーもスフィアソルジャーに取り憑かれていたので、同様の問題が起こる可能性も高い。今後の展開を見守りたいと思う。

ウルトラマンは挫けない

さて、カナタに続き、ケンゴもウルトラマントリガーへと変身してゾンボーグ兵やスフィアたち、そして記憶を失ってフラフラのヤプールを倒すのだが、基地の外側、月面では、ギャラクトロンMK2にスフィアが取り憑き、暴れ始めていた。

画像引用元:ウルトラマンデッカー

ギャラクトロンMK2

身長:61m

体重:67,000t

見るからに強力そうなサイボーグ怪獣、といった風情だが、元ネタは『ウルトラマンジード』。ジード、オーブ、ゼロという3人のウルトラマンを相手にしただけあって、その力は強大。今回もトリガーとデッカーの二人を圧倒する。

だが、ここからが本番だ。

挫けそうになりながらも、諦めない二人のウルトラマン。デッカーはダイナミックに、トリガーは最終形態グリッタートリガーエタニティへとタイプチェンジ。熱すぎる。最高だ。こんな場面においても「みんなを笑顔にしたい」と微笑むケンゴには空気の読めなさを感じるが、それこそがらしさでもあるのだろうし、一方のカナタはいつも通り愚直なまでの真っ直ぐさを見せる。

最後は2人のウルトラマンによる同時斬撃でフィニッシュ。

画像引用元:ウルトラマンデッカー

この最後のバトルだけで「いいもの観た」感に包まれる。大人も子どもも胸を高鳴らせたに違いない。

愛すべき仲間たち

ところで今回は、月面での2人のウルトラマンの活躍を描くと同時に、地球のTPUの仲間たちの様子も描かれる。

戦闘の最中、突如姿を消したカナタのことを誤魔化すため、「怪我をして医務室にいる」とハネジローがついたウソを起点に、まるでコントのようなやり取りが繰り広げられる。普通に「行方不明」にしておけば、こんな苦労はしなくて良いだろうに、と思うが、それでは展開として弱いのかもしれない。

カナタのケガを心配するイチカ、要領を得ないハネジローに疑問の目を向けるリュウモン、副隊長としての責任感を示すカイザキ、さりげなく気配りをするムラホシ、と隊員それぞれの個性がコミカルに描かれる。

中でも、A.Iのくせに、しどろもどろになるハネジローは、『スターウォーズ』に登場するC-3POのように人間味溢れる愛すべきキャラだ。見た目はC-3POというよりはR2-D2だが、人間の言葉を話すという点で共通性を感じるのかもしれない。

「お前は俺の親友だ!」と微笑むカナタと抱きかかえられたハネジローとのツーショットでラストは飾られる。

人間とA.I。種族を超えた絆に心動かされるのは、ウルトラシリーズに限らず、『ドラえもん』でも『ポケットモンスター』でも一緒だ。生まれた国や、肌や目の色が違うだけで異物扱いすることが当たり前になっている世界だからこそ、私たちは違いを持つものたちが絆を深めていくことを希少だと感じてしまうのかもしれない。ふと、そんなことを考えさせられるラストシーンだった。

もう一つ、忘れてはいけない絆が描かれたことについても触れておこう。

カナタの両親が、カナタに向けて語りかけるビデオ(ホログラフィー?)レターである。火星でケンゴが出会った時に撮影してくれたらしい。いつ会えるかもわからないカナタのために用意してくれた上に、持ち歩いているとは、気配りのレベルが段違いである。

自分たちが無事であること、そしてGUTS-SELECTの一員として戦う息子を誇りに思っていることなどを熱っぽく語りかける父と母に目を潤ませるカナタの姿が眩しい。子どもが生まれてからというもの、この手の展開には滅法弱くなってしまった。

カナタと両親が再会できる日は、もう少し先のことだろう。それでも、無事であることがわかっただけでも戦い続ける力にはなったはずである。感動の再会に向けて、戦いは最終盤へと向かっていく。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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