2022年9月3日放送『ウルトラマンデッカー』第8話「光と闇、ふたたび」(監督:坂本浩一 脚本:ハヤシナオキ)
スフィアの力を得て復活した邪神メガロゾーアの中にカルミラの影を見たマナカ ケンゴ。
全ての人を笑顔にしたい、という想いで戦ってきたケンゴにとって、敵だったとはいえ、カルミラを最後まで笑顔にすることができなかったことは最大の心残りだった。
その時の悔しさが込み上げ、思わず攻撃の手を止めてしまったケンゴに対し、「どうして?」と問い詰めるアスミ カナタだったが、ケンゴの想いに触れることで、自身が戦う意味を改めて考えさせられることになる。
デッカーとトリガーが再び並び立つ第8話をレビュー。ネタバレも含むが、これから視聴する楽しみを奪うほどではないので安心していただきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第8話のキャストをご紹介する。
以下の画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。
アスミ カナタ
松本大輝
キリノ イチカ
村山優香
リュウモン ソウマ
大地伸永
カイザキ サワ
宮澤佐江
ムラホシ タイジ
黄川田雅哉
マナカ ケンゴ
寺坂頼我
シズマ ユナ
豊田ルナ
ハネジローの声
土田 大
カルミラの声
上坂すみれ
サクマ テッシン(回想):水野 直
タツミ セイヤ(回想):高木勝也
街の女性:福島弘子
ウルトラマンデッカー:岩田栄慶
ウルトラマントリガー:石川真之介
カルミラ:安川桃香
スフィアメガロゾーア:梶川賢司
花
道端に咲いた一輪の花。
その花粉を吸い込んだ人たちは次々に正気を失ってしまう。しかし、その顔は一様に幸せそうだ。
GUTS-SELECTの隊員たちと共に現場へ急行したマナカ ケンゴは、その花を見つけて驚く。それは前作『ウルトラマントリガー』で自らが育てていた新種の植物・ルルイエにそっくりな花だったのだ。
その花に不用意に近づいたカナタもまた意識を失ってしまう。
意識を失ったカナタは夢を見ていた。それはとても幸せな夢。
この花の花粉には快楽物質が含まれており、それを吸い込んだ者は、自らの理想の世界を夢見てしまうらしい。まるで麻薬のようなもので、その快楽を一度味わってしまうと、夢を見続けたいがために花を守ろうとしてしまうらしい。とんでもない自己防衛本能である。
吸い込んだ花粉が少量だったことも幸いし、夜になってカナタは目を覚ます。するとその花は、ビルを超えるほどの大きさにまで急成長していた。「マンモスフラワー」のオマージュのようだ。
そこに、思いがけない来訪者が現れる。
再会
『トリガー』のヒロイン・シズマ ユナである。
今はシズマ財団で父親ミツクニの秘書をしているとのこと。突然の再会に驚くケンゴだったが、再会の喜びを口にすることもなく、連絡事項を淡々と伝えるユナ。
あの花の名はギジェランというらしい。そして用意してくれたのは、そのギジェランをも根絶やしにできる強力な除草剤。このあたりの展開もマンモスフラワーに準じている。
それにしても、『トリガー』で見せていた屈託のない明るさはなく、クールビューティーな立ち居振る舞いが目立つユナ。それもこれも年月が経ったからなのか? などと思っていたら、その後ケンゴの個室を訪れた途端、笑顔でハグ。父の仕事を受け継ぐため、仕事の際は笑顔を見せないよう心がけているのだとか。なんだか『ハケンの品格』フォロワーみたいだが、そんな無理して作ったマジメな顔より柔らかい笑顔が魅力的だ。そしてツンデレ最強である。
超古代文明の記録によると、ギジェランの花粉は医療現場でも使われていたらしい。やはり麻薬と同じだ。
ギジェランとルルイエが酷似している理由として、ケンゴが「みんなを笑顔にしたい」と願うあまり、知らず知らずのうちにトリガーの持つ超古代文明の記憶に影響されて、“みんなを笑顔にするギジェラン”に似た新種の植物・ルルイエを作ってしまったのではないか? とユナは予想する。
ひとしきり再会を喜び合った後、旧GUTS-SELECTの制服に身を包んだケンゴとユナは、カナタたちと共にギジェラン殲滅作戦に参加する。こうして見てみると、旧型の制服はなかなかイケてる。
共に
ナースデッセイによるギジェランの殲滅は成功。幻覚の虜になっていた人たちは、その呪縛から解き放たれる。
そこに再び現れる邪神スフィアメガロゾーア。
目配せをして駆け出すカナタとケンゴ。その姿を見守るユナ。ケンゴがトリガーであることを知っているのは当然としても、カナタの正体もすっかりバレている様子だ。しかし、ユナが正体を知っていることはともかく、唐突に姿を消したカナタを不審がるイチカたちに「大丈夫。よくあることだから」と思わせぶりなユナの一言は完全にアウトだろう。
カルミラ救出に全力を尽くすケンゴ。
その想いを受けて、カナタもケンゴに助力する。
ユナ、ソウマ、イチカも、地上から2人のウルトラマンを援護する。
メガロゾーアの中から飛び出すカルミラ。
ケンゴとカルミラの邂逅シーンは、なかなかに熱い。今回のタイトルが「光と闇、ふたたび」であることから、カルミラが再び敵対するのかと思ったのだが、そうではなかった。闇の巨人も光の暖かさに癒されたかったらしい。
最後は、デッカー、トリガー、カルミラの3人が共闘してメガロゾーアを粉砕する。ドラマパートで過去の因縁を清算しただけにとどまらず、バトルもそれなりのボリュームをもって熱く熱く盛り上げる。そういった意味では神回と呼んで良いのではなかろうか。
託された地球の平和
ケンゴは火星に戻るらしい。
火星でユザレから受け取った「ウルトラデュアルソード」をカナタに渡すケンゴ。この瞬間、地球の平和はカナタに託されたわけだ。
とはいえ、これが今生の別れ、ということではなく、また会うための一時的な別れとなるだろう。
何故なら『ウルトラマンデッカー』と『ウルトラマントリガー』は地続きの物語だからだ。こんな序盤にたった2話だけ登場して終わってしまうわけがない。
スフィアによって作られた障壁を突き抜けることのできるカードを手に、火星へと飛び立つケンゴ。このカードを使える回数は有限。このことが後々の展開にもたらす影響は小さくないはずである。
それにしても、「みんなを笑顔にするため」に戦ってきたケンゴのように明確な夢を持てないでいるカナタだが、今はそれでいいのだろう。
「自分にできることをする」
少々、場当たり的ではあるけれど、目の前の課題を一つずつクリアしていった先に、夢というのは見つかるものかもしれない。「最近の若者は夢がない」とかよく聞くけれど、夢なんてものは無理やり持つものでも絞り出すものでもないし、持っている人が持っていない人より偉いわけでもない。寝ていても見てしまうもの、見えてしまうものが夢だろう。
カナタの姿は、夢を持てないでいる人たちへのエールのようにも見える。そういった意味でも、今回は神回と言って良い。
『トリガー』を観ていないとイマイチ乗り切れない部分はあるけれど、純粋に1本の作品として観てもつまらないという感想はないと思う。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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