2022年11月27日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン38話「ちんぷんかんクッキング」(監督:諸田 敏 脚本:井上敏樹)をレビュー
「みほちゃんが帰ってきた」
そう言って喜ぶ雉野つよしは、指名手配犯だった犬塚 翼を警察に売ったことで手に入れた100万円の懸賞金を使って、ドンブラザーズの面々に有名イタリアンをご馳走する。
最初は和気藹々とした食事会だったが、つまらないことがきっかけとなって大揉め。リストランテに居合わせた他の客たちが眉を顰める中、オーナーシェフの高村が現れる。
「お帰りください」と憤る高村に対し、犬塚が料理にケチをつけたところから、二人が料理で対決することになる、という謎の展開に。さて、料理対決の行方は?
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここではドン38話のキャストをご紹介。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品もチェックしていただきたい。
以下で使用している画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』より引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
桃谷ジロウ/ドンドラゴクウ
石川雷蔵
ソノイ
富永勇也
ソノニ※画面奥
宮崎あみさ
ソノザ※画面手前
タカハシシンノスケ
ドンムラサメ(声)
村瀬 歩
鬼頭ゆり子
三輪ひとみ
雉野みほ
新田桃子
ルミ
朝乃あかり
おでん屋のおやじ
大高洋夫
飯田典子
高村
イタリアンスタッフ※画面右
中華シェフ
野田孝之輔
中華ウェイトレス
藤田 怜
卵屋のおやじ
マザー(声):能登麻美子
タイトル通りの謎展開
タイトルにある通り、全くもって「ちんぷんかん」な展開が続く(ディスっているわけではない。むしろ『ドンブラ』においては褒め言葉と言っても良いかもしれない)。
獣人の森から生還した犬塚の聴取をした後、「松!」と頬を赤らめながら犬塚を送り出す鬼頭ゆり子はいつも通りだし、ようやく指名手配が外れたと喜んだのも束の間、獣人がコピーした犬塚のせいで再び指名手配される犬塚もまたいつも通りの展開。
極め付けは「みほちゃんが帰ってきた」と聞かされ、不審に思いながら雉野の家に行ってみた犬塚が、人形に話しかけている雉野を抱きしめるシーン。今、自分が観ているものが特撮ヒーロー番組だということを綺麗さっぱり忘れてしまう。
料理で対決することになった犬塚と高村は、いずれもオムレツで勝負をかける。そのためには「最高の卵が必要」だと言い出す二人。
そこで猿原は、山奥にある「最高の卵(というネーミングが怪しすぎる)」の直売所まで足を運ぶのだが、ここで最後の1パックを巡って、食事代(100万円以上!?)が払えず、高村の下でタダ働きをしている雉野と、目的不明なソノイとの三つ巴の戦いが始まる。
結局、卵屋のおやじの計らいで、3人とも最高の卵を手にすることができるのだが、料理対決の途中でヒトツ鬼が現れてそれどころではなくなってしまう。
ただしソノイだけは、いつものおでん屋で、その最高の卵を食していた。“おでんは卵派”の私には、とても羨ましい光景であった。
肥えた舌
今回のキーパーソンはグルメ評論家・飯田典子。登場するシェフたちの態度を見る限り、かなり影響力のある評論家であるようだ。
しかし、美味いものばかり食べ続けたせいだろう。単に「美味い」だけの料理は食べ飽きて、それよりも「新しい味の料理が食べたい」という欲求が募る。その欲望が暴走して誕生したヒトツ鬼が電子鬼である。
電子鬼
身長:193cm
体重:223kg
スキン:DZメカ8022型
1980年2月から1981年1月まで放送されたスーパー戦隊シリーズ第4作『電子戦隊デンジマン』がモチーフとなっている。グルメと『デンジマン』の共通項は見当たらないが、頭に煌めくDZ(デンジ)メカで人々を吸収し、異空間へと送り込んでいた。
犬塚と高村も異空間へと飛ばされてしまうが、そこには大勢の人たちが閉じ込められており、皆一様に腹を空かせていた。そこで二人は、見たこともない青いフルーツを、「良い匂いがする」というだけで疑いなく調理して振る舞おうとするのだが、これが『仮面ライダー鎧武』のロックシードなら、食べた人は怪人に変貌してしまうパターンである。
物語終盤で人に戻った典子が「新しい味」だと喜んで食べていたが、これが単に美味しい異世界フルーツだったのか、それともこの時食べたことが原因となって、再び怪人として登場するのかは不明である。
それにしても、青い食べ物というのは、何故あんなにも毒々しいのだろう。考えてみると、青い食材というのは、ほとんど思い浮かばない。正直なところ、あまり美味しそうには見えなかった。
ジロウがルミの作った田舎で採れた野菜の煮物をタロウに食べさせるシーンがあったが、日本の一般家庭では特に珍しくもない、ありきたりな煮物が美味しそうに見えたのは、青い食材との対比によるものかもしれない。しかもこの煮物は、味にうるさいタロウを一瞬で幽体離脱(?)させてしまうほどの美味しさのよう。ああ見えて、ルミの料理の腕は侮れないということだろう。
しかし、体調の悪いジロウのために甲斐甲斐しく尽くしたルミの、ジロウとの別れ際に見せた本音は強烈。一見、純朴な田舎娘にしか見えないのに、きちんと裏の顔も持っている、というのは、いかにも人間臭い。単なる“良い娘”で終わらせないところに、コメディらしさと井上敏樹さんらしさが感じられる。
ちんぷんかんな展開の果て
帰宅し、物言わぬ人形にみほの姿を投影して話しかける雉野。ふと隣の部屋の明かりがつく。
「お帰り。つよし君」
なんと、そこに立っていたのは雉野みほ。
まさかの展開である。
倉持夏美の獣人が、再び雉野みほとしての物語を紡ごうとしているのだろうか? それとも何か狙いがあるのだろうか?
ちんぷんかんな展開の果てに、こうしてしれっと驚きの展開を用意しているところは、いかにもドンブラ流。
まだまだ終わりそうにない、みほと雉野の物語。これもまた、最終盤へ向けてヒートアップすること間違いなしの『ドンブラザーズ』を彩る需要な要素だ。
加えて今回の巨大ロボ戦は、電子鬼ではなく、若干暴走気味のドンムラサメがチェンジしたブラックオニタイジンムラサメとの戦いとなった。戦い自体はいつも通り、短い尺の中でドンブラザーズの圧勝だったが、ソノザの封印を解かれたドンムラサメがこれからどのように絡んでくるのかもまた注目ポイントとなるだろう。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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