2022年4月10日放送『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン6話「キジみっかてんか」(監督:渡辺勝也 脚本:井上敏樹)
ついに明かされたいくつかの謎。そして、さらに深まる謎。
そして、劇中で初めて「ドンブラザーズ」という戦隊名が語られた記念回でもある。
ネタバレと考察もたっぷりにレビューするドン6話。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
まずは今回のキャストをご紹介。本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。なお、画像は全て『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』から引用している。
桃井タロウ/ドンモモタロウ
樋口幸平
猿原真一/サルブラザー
別府由来
鬼頭はるか/オニシスター
志田こはく
犬塚 翼/イヌブラザー
柊太朗(画面左下:イヌブラザー)
雉野つよし/キジブラザー
鈴木浩文
五色田介人
駒木根葵汰
ソノイ
富永勇也
ソノニ
宮崎あみさ
ソノザ
タカハシシンノスケ
雉野みほ
新田桃子
切田
部長
滝 晃太朗
看護師
水川 碧(画面左)
看護長
ダンディな男
タクシー運転手
村尾俊明
ウェイター
滝本 圭(画面右)
桃井 陣
和田聰宏
同僚: 植田敬仁 ・ 竹内 啓
雉野とタロウ
美人で美容師としても一流の腕を持つ、妻・みほに対し、何ひとつ取り柄がないと嘆く雉野に転機が訪れる。
きっかけは、喫茶どんぶらでの一幕。「デキる男になりたい」と呟いた雉野に、どんぶらのマスター・五色田介人がかけた「ポイントを使えばできるよ」という謎の言葉。「そんなに都合の良いポイントがあるならすぐに使いたいですよ」と冗談めかして言った雉野に、「いいよ」といつもの言葉をかける介人。
そこから雉野の無双が始まる。
提出した企画書は採用される。期限に間に合わないと嘆く同僚のピンチを救う。部長に昇進。運転手付きのベンツを乗り回し、昇進祝いと称して、超一流レストランを貸し切り、妻と二人でディナーを楽しむ。絵に描いたようなデキる男である。
しかし、ウェイターには罵声を浴びせ、同じ職場の仲間を「仕事がデキない」と揶揄。仕事はデキるかもしれないが、これじゃあただのイヤなヤツだ。と、思っていたら、みほが急に体調を崩し、入院してしまう。その原因について、雉野は、不甲斐ない自分のせいで、みほが無理をしてきたためだと思い込む。そこで雉野は、超人・桃井タロウを乗り越えられたら、自分はもっとデキる男になれるはずだという、なんとも身勝手な理由で勝負を挑むのだが、タロウはその勝負を受けて立つ。
「昔から何をやってもダメだった。得意なことなんて何もない」という雉野に、「昔から何でもできた。ゆえに、得意なことなんて何もない」と答えるタロウの言葉は深い。
動物鬼
看護師・切田の「全ての患者を自分で救う」という欲望から生まれたヒトツ鬼が「動物鬼」。
動物鬼
身長:192cm
体重:230kg
スキン:あつまるアニマル
『動物戦隊ジュウオウジャー』がモチーフとなっており、サメの口の中にライオンの顔、そのライオンの口の中にはイーグルの顔という、なかなかアーティスティックなデザイン。似たようなデザインをどこかで見たような気もするが、どこだったかは思い出せない。しかし、元ネタがあろうがなかろうが、これまでのヒトツ鬼の中では個人的ベストだ。髑髏の目から生えたゾウの牙もカッコいい。
「誰かを救いたい」という気持ちがエスカレートして、「自分が救うための誰かを創出する」と変わってしまうのは、自ら放火して真っ先に消火活動に勤しむ消防士のようだ。英雄症候群(ヒーロー・シンドローム)というヤツである。要するに、これは現実にあり得る話なのだ。事実は小説より奇なり、である。
「脳人」と「管理人」
今回、ついに謎だらけだった「脳人」とは何者なのかが明らかとなる。
人間よりも高次元の存在で、その脳人の存在する次元は、人間の波動によって支えられているという。そして、その波動を乱すのが「人間の欲望」。
だから、脳人は人間の欲望の権化であるヒトツ鬼を消滅させるのだという。なんとも身勝手に聞こえるが、考えてみれば、我々人間にも十分当てはまるお話だ。自分たちの生活圏を脅かす獣たちを排除し、食物を守ために殺虫剤をばら撒く。さらには利害関係に基づく人間同士の争いも絶えない。脳人となんら変わらないではないか。
むしろ自らの世界の平穏を守るためだけに戦う脳人の方が、金銭や名誉、果ては快楽のために他者を排斥しようとする人間よりずっとマトモかもしれない。
その脳人たちは、これまでも登場してきたソノイ、ソノニ、ソノザの3人だけではないようで、今回ソノイの口から「元老院」というキーワードが語られた。これがどのような組織で、どれほどの構成員がいるのかは全く不明だが、あからさまに怪しいのは間違いない。
さらに、彼らには人間のことが理解できないらしい。人間の「愛する」という感情がわからないソノニと、人間の「笑う」という感情がわからないソノザ。
ここでふと思い出す。「幸せ」がわからないタロウ。つまり、桃井タロウもまた脳人だということなのだろう。生まれてすぐに、脳人の世界から送り込まれた人ならざる者。だとすれば、ウソをつく機能がない、といったおかしな設定も、幼い頃からなんでもできる超人という設定も頷ける。
「ポイント」というキーワードが登場したのも新しい。
正確には「キビ・ポイント」と言うらしいが、このポイントを集めることで、願いを叶えることができるらしい。そして、その管理をしているのが、喫茶どんぶらのマスター・五色田介人である。
いったい彼は、何者なのか? 彼もまた脳人なのか? さらに謎は深まる。
雉野のフィーバータイムは、このキジ・ポイントを消費することで実現したのだ。使った途端に“デキる男”になったものの、ほんの数日で元通り。まさに「三日天下」。
しかし、これは欲に目が眩んだ雉野を愚かさの象徴とした物語ではない。最後に妻と笑い合う雉野を見て、「お前の勝ちだ。俺には女性をそんな笑顔にすることはできない」と、そっとその場を後にするタロウの台詞には、目の前にあるささやかな幸せに気づくこともなく「もっと、もっと」と欲望の高みを目指す人たちに対する憐れみさえ感じられる。幸せを理解できないタロウと、幸せに気づけない人たちと、哀しいのは果たしてどちらか。
明かされた謎と、さらに深まった謎の数々。まさに、予想以上の面白さである。心底オススメしたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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