2022年12月18日放送『仮面ライダーギーツ』第15話「謀略Ⅵ:仮面ライダーの資格」(監督:坂本浩一 脚本:高橋悠也)をレビュー
華麗なる逆転劇。
『ギーツ』史上最も熱い展開と言っても良い。
ジャマトという謎の存在から世界を守り、その対価として理想の世界を叶えることができる“デザイアグランプリ”というゲームへの参加者に与えられる称号を超え、半世紀を超える長きに亘り、ヒーローとして確固たる地位を築いた“仮面ライダー”という称号について改めて考えさせられたと言っても過言ではない。
盛大なネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
※以下で使用している画像は全て『仮面ライダーギーツ』より引用している。
ただの世界的スター
前回、ゲームマスター・ギロリによってデザイアグランプリから脱落させられてしまった浮世英寿。
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
簡 秀吉
デザイアグランプリの記憶を失った彼は、これまで通り、世界的スター(スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ)としての日々を過ごし始めるのだが、ここで違和感。世界的スターという地位は元々英寿が持っていたものではなく、以前、デザイアグランプリで勝利した際に手に入れた地位だったはずだ。しかも未だにギロリとツムリとは家族のままの様子。だとすれば、今回、デザイアグランプリの記憶は失ったものの、それ以前に勝ち取った理想の世界は継続しているということになる。
英寿は過去に何度も勝利し、その度に理想の世界を叶えていた。そこには何と書いていたか? 「俺が世界スター(原文のまま。本記事ではあえて“世界的スター”と記述している)になっている世界」「デザイアグランプリの運営と家族になっている世界」「俺が働かなくても暮らせる世界」そして・・・
大逆転の布石は、第10話の時点でとっくに打たれていたのだ。
しかし、当の英寿はとりあえず目の前のスケジュールを淡々とこなしていく。雑誌の取材にグラビア撮影、さらにはバラエティ番組の収録と、その仕事はいかにも人気者らしいものばかり。
しかし、グラビアとはいえ、これ↑は何を意識した写真なのだろう。
最終戦・戦艦ゲーム
デザイアグランプリはついに最終戦。
参加者は景和、袮音、道長の3人。
桜井景和/仮面ライダータイクーン
佐藤瑠雅
鞍馬袮音/仮面ライダーナーゴ
星乃夢奈
吾妻道長/仮面ライダーバッファ
杢代和人
これまでと異なり、英寿がいない状況に腰が引けている様子の景和と袮音。ただ一人、道長だけは、英寿がいない今こそデザ神になる千載一遇のチャンスと張り切っている。しかし、この前のめりの姿勢が、道長を後に窮地に陥れる。
そうして街の上空に現れた、戦艦(ラスボス)。ラフレシアをモチーフにしたような禍々しいデザインが特徴的。余談だが、この手の植物をモチーフにしたモンスターの白眉は、未だに『ファイナルファンタジー』に登場したオチューだと思っている。天野喜孝さんは、そのセンスだけでなく、絵柄もまた最高である。
逃げ惑う街の人たちを助けながら、ジャマトに戦いを挑む3人。その戦いの最中、道長は英寿が以前、「城は内側から崩せる」と語っていたことを思い出し、地上に蔓延るザコではなく本丸を崩しにかかるのだが、これが裏目に出てしまう。
プロペラバックルの力を使い空中戦を挑むが、戦艦の圧倒的な火力の前にあえなく撃墜されてしまい、息も絶え絶えの道長の前に英寿が現れる。これは単なる偶然であり、英寿には道長に関する記憶すら無い。
それでも、そんな状況を理解してもなお、道長は英寿に噛み付かずにはいられない。
「何故、お前にできて俺にはできない?」
自信満々だった道長の本音が覗く。デザイアグランプリで命を落とした親友の復讐のため、ここまで無理やり自分を奮い立たせてきたのだろう。それでも思い知らされた圧倒的な実力差。その表情には悲壮感が漂う。
「負けなければ、いつか勝てる日が来ると言ったのは嘘だったのか?」と問いかける道長。これまでずっと英寿を敵視し、ずっと憎まれ口を叩き続けてきた道長だったが、実は英寿の言葉によって支えられていたことがわかる。
よく見ると、道長にデザイアドライバーを押し付けられた英寿がIDコアに触れた瞬間、何かハッとしたような表情をするところが見て取れる。ライバルである道長が、自分の命と引き換えに英寿の記憶を取り戻した瞬間だ。物語のターニングポイントであり、おそらくは今後振り返っても、本作屈指の名シーンとなるはずだ。
復活のギーツ
記憶を取り戻した英寿は、ギロリにデザイアグランプリへの参加を直訴するが、そこには自らの理想の世界を実現したいという欲望などなく、ただ「自分たちの世界を守りたい」という一心だった。これまでは、「母に逢いたい」という自らの希望を叶えるためには他人を利用することも厭わなかった(とはいえ、相手に対しても最低限の配慮はしていたし、実は思いやりに溢れた性格であることも描かれていた)英寿だったが、そんな私利私欲だけで戦ってはいなかったことをきちんと示したことになる。
「お前にもう資格はない」と言い放つギロリだったが、それに意見したのはツムリだ。
ツムリ
青島 心
「俺が死ぬまでデザイアグランプリに参加できる世界」と書かれたカードを示し、デザイアドライバーとギーツのIDコアを手渡す。既に実現された世界をキャンセルすることは、流石のギロリでもできないらしい。ツムリもあからさまにギロリに反旗を翻したわけではなく、あくまでも事実を示しただけだが、ギロリのやり方に違和感を持っていることは確かなようだ。
復活したギーツは、やはりカッコいい。スタイリッシュなアクションは『カブト』や『ウィザード』にも匹敵すると思う。フライング出演した夏映画や、TVシリーズ最初期の数話で見せてくれた、あれである。ゲームで言えば、カプコンの『デビル・メイ・クライ』あたりを彷彿とさせるというのは言い過ぎだろうか。
迫り来る大勢のジャマトたちにブーストで打撃を叩き込み、バック転しながら「リボルブオン」。続いて、バックルを変えて剣で切り裂くという途切れないアクションが見ものだ。
最後はコマンドフォームで上空から戦艦に特攻してとどめを刺すが、何故かゲームは終わらない・・・
垣間見える謎
ついに第1クールも終盤となり、徐々にデザイアグランプリの秘密が明らかにされていく。
どういう理由かは未だ不明だが、ギロリとアルキメデルは、それぞれに仮面ライダーとジャマトを育てて対決させているようだ。
ギロリ
忍成修吾
アルキメデル
春海四方
とはいえ、敵対しているようには見えず、どちらかといえば同じ組織の別部署同士で技術競争をしているように見える。しかも、立場的にはゲームマスターを務めるギロリの方が上のようだ。
ギロリが最近何度も口にしている「デザイアグランプリを存続させるため」という言葉も重要なキーワードだろう。どちらかをどちらかが殲滅して終わり、ではないのだ。続けることに何らかの意味があるのだ。
もう一つ重要な秘密に関することとして、今回も戦闘中のジャマトが人間の言葉を口にしたことは外せないだろう。しかもそれは、第1話で命を落とした仮面ライダーシローの台詞だったのだから。やはり、ジャマトはデザイアグランプリで命を落とした人間を養分にでもしているのではないか。
アルキメデルの「ジャマトは栄養と学習で進化する」という言葉がやけに引っかかる。
また、最後に訳知り顔で登場したニラムの立場も気になるところ。
ニラム
北村 諒
それらが明らかになるのは次回以降。徐々に謎が解き明かされ、それと同時に面白さも増してきた『仮面ライダーギーツ』。まだまだ追いつける。まだ観たことがない方も、序盤で観なくなったという方にもオススメしたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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