『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIE バトルロワイヤル』感想

雷堂

2022年12月23日公開『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIE バトルロワイヤル』(監督:柴﨑貴行 脚本:高橋悠也・木下半太)をレビュー

これは『リバイス』の真のエンディングを描いた映画である。

そういった意味においては、『リバイス』ファンは必見の作品なのだが、どうにも中途半端な感じが拭えなかった。

もちろん面白かった部分もあるのだが、あえて点数をつけるなら、70点というところ。

良いところも、気になったところも全て率直に書いてみたい。ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。

目次

リバイス最後の物語

本作は『仮面ライダーギーツ』の正式な映画デビュー(夏映画でのフライング参戦はカウントしない)であると同時に、『仮面ライダーリバイス』の最後を飾る物語だ。TVシリーズとは完全に地続きの設定となっており、戦いの終焉と共に消滅した相棒・バイスの姿はないし、一輝の中にはバイスの記憶さえも無い。これが本作のキーポイントとなる。

『リバイス』のTVシリーズが最終回を迎えて、まだ3ヶ月ほどしか経っていないが、本作においては少なくとも1年以上が経過したことになっているらしい。というのは、五十嵐家に幸四郎(コウシロウ)という三男にして四人目の子が誕生していることから推察できる。歳の離れた弟にメロメロな様子の三兄妹たちだが、この幸四郎が今回の事件のきっかけとなってしまう。

ギフを倒してもなお、空に刻まれたままとなっている時空の裂け目。そこから姿を現した二体の地球外生命体によって、この幸四郎の中に潜む悪魔が奪われてしまうのだ。地球外生命体たちは、元々ギフに滅ぼされた星からやってきたらしい。彼らの名はバリデロとイザンギ。彼らの目的は、ギフの力を手に入れること。そこで標的となったのが、ギフの遺伝子を持つ幸四郎だったのである。

幸四郎をベビーカーで散歩に連れ出した三兄妹の前に突如姿を見せたバリデロとイザンギ。大二もさくらもそれぞれの最強フォームで応戦するが、手も足も出ない。頼みの一輝はと言えば、相変わらずバイスを失ったままで、リバイに変身はできるものの、その力は本来の半分も発揮することができない状態である。果敢に戦いを挑むも、生死の境を彷徨うほどの大怪我を負ってしまう一輝。さらに幸四郎は連れ去られてしまう。

そこで、大二とさくらは、夏木 花、玉置 豪、ジョージ・狩崎らと共にイザンギたちを探し出すが、幸四郎から奪った悪魔の力を得たイザンギとバリデロに、全員倒されてしまう。

ちなみにこのシーンで玉置が変身するライダーは“ゲットオーバーデモンズ”という新ライダー。しかし、配色が違うとか、頭部のアンテナが大型化しているとか、違いが誤差程度の上、活躍する時間がほぼ無いので、「あれ? なんか違う」と一瞬違和感を感じる程度。せっかくの新型なのに、モブ扱いする意味がわからない。出す必要があったのだろうか?

一方、生と死の間で、一輝は選択を迫られていた。

二つに分かれた道。それぞれの先には、オーロラのように柔らかな光が溢れる穏やかな世界と、炎が燃え盛る地獄のような世界が見える。

「お前は頑張った」

そんな労いの言葉と共に、穏やかな世界に向けて足を踏み出す一輝だが、ふと「こっちじゃない」と踵を返す。

燃え盛る炎の向こうに伸ばした手。

その手を握り返したのは、かつての盟友・バイスだった。

『リバイス』最終回から続くような熱い展開で、久々に完全復活の一輝&バイス。

今まさにトドメを刺されようとしている大二たちの前にバイクで姿を現す。重傷はどうなったのかがめちゃくちゃ気になるが、それは聞くだけ野暮というものである。

そもそも一輝がバイクに乗れたのか? という疑問については、久々に二人揃って変身するシーンで、バックに映し出されるお馴染みのメッセージアプリっぽい画面に、「バイク乗れたんだね」とバイスから一輝に送ったメッセージが確認できる。家族や仲間のピンチを救うために現れる一輝が、これまで通り自転車で登場するのはカッコ悪いし、何よりスピード感に欠けるということもあってのバイクだったとは思うが、ひっそりとツッコミを入れるあたりにバイスらしさ、『リバイス』らしさは健在である。

ただしこの後、イザンギとバリデロを圧倒する二人を満面の笑顔で応援する仲間たちの画には違和感があった。『セイバー』でも同様の演出があったことを思い出すが、傍観者に過ぎるというか、緊張感がなさすぎる。二人の復活が嬉しいことはわかるのだが、せめて、二人が復活したことに背中を押されて立ち上がるとか、そういった演出にして欲しかったと思ったのは私だけだろうか?

ギーツ第15話直後の物語

第1部の『リバイス』パートが終了したところで登場した『ギーツ』メンバーの中には吾妻道長の顔も見えるが、「どうして俺が生きている?」というような台詞があるので、物語の時系列としては、道長が脱落した第15話直後ということになるのだろう。新キャラクターのコラス(“目を凝らす”という言葉からのネーミングだろう。やはりデザイアグランプリの中枢にいる関係者は目に関係する名前ばかりだ)によってルールが書き換えられたために復活できたらしい。

このコラスという男は、ギロリ以前のゲームマスターだったらしい。ギロリからヴィジョンドライバーを奪い取ると、ツムリをも精神支配で部下とし(精神支配されたことでツムリは黒ツムリとなるが、いつものツムリの方が100倍かわいいと思う)、英寿たちに幸四郎から生まれた悪魔を42.195km先のゴールまで運ばせる“悪魔マラソンゲーム”を強いるのだった。

この“悪魔マラソンゲーム”がこれまでのゲームと異なるのは、浮世英寿、桜井景和、鞍馬袮音、吾妻道長の4人の中で誰か1人が勝ち抜けろ、というものではなく、ゴールまで悪魔を届けることが勝利条件であり、そのためには4人で協力することも問題ない、とされていることだ。

さらにマラソンとは言うものの、移動手段としてさまざまな乗り物が用意されている。4人はとりあえず、トラックをチョイスし、道長の運転でゴールに向けて走り出すのだが、事情を知らない一輝たちが、幸四郎の悪魔を取り返そうと追いかけてくる。

英寿たち4人は、一輝たちの目を欺くために別行動を始める。その結果、英寿を一輝が、景和を大二が、袮音をさくらが、そして道長をバイスがそれぞれに追いかける。ところがそこに、謎のライダーたちまで姿を現す。本作の目玉の一つでもある『仮面ライダー龍騎』の面々。リュウガ、ナイト、王蛇の3人である。

さらに、いつものデザイアグランプリでは一般エリアと戦闘エリアとを隔てているジャマーエリアの赤い壁が、凄まじい勢いで追いかけてくる。その壁に触れた者は、皆消滅してしまうという立ち止まることも許されない状況でゴール目指してひた走る英寿たち。仲間たちが次々と壁に飲み込まれてしまう状況の中、「悪魔を返して欲しい」と懇願する一輝の様子にただならぬものを感じた英寿は、お互いに変身解除して話を聞こうとするのだが、ここで『リバイス』の最終回のくだりが使われるとは思ってもみなかった。思い返せば大したことではないけれど、観ている時には、思わず「やるな」と感心してしまった。

その話し合いの結果、ジャマーエリアの侵食によって甚大な被害が出ている状況を鑑みて、ひとまずゴールまでは悪魔を連れて行こうと合意する英寿と一輝。ゴールに辿り着いた二人の前に、更なる試練が襲いかかる。

新ライダーも登場のデザイアロワイヤル

ここでゲームマスター・コラスが再登場。自らがマスターを務めていた頃のデザイアグランプリで連戦連勝を誇っていた“最強のデザ神”・轟 戒真と共にデザイアロワイヤルという仮面ライダー同士の戦いを始めるのだった。

この戒真という男、実は轟 栄一という有名政治家の息子だった。優秀な兄たちは、いずれも父の跡を追って政治家となっているようだが、この戒真だけは、いわゆる脳筋系。政治家を志すこともなく、格闘技チャンピオンとしてその名を轟かせていた。

栄一は「独裁者になりたい」という自らの欲望を叶えるため、「落ちこぼれ」と蔑む戒真をデザイアグランプリに出場させていた。自らの権力のために息子を犠牲にする。そんな汚れ役を戒真があえて引き受けたのは、それでも父親が自分を必要だと思ってくれることに喜びを感じていたからなのではなかろうか。ここでも『リバイス』の1つのテーマだった家族の姿(こちらはかなり歪んだ形だが)が描かれている。

そして戒真が変身するのが、新ライダー・シーカー。どこからどう見ても“鹿”である。パワードビルダーフォームという名の通り、工事現場でよく見る重機系の雰囲気が漂う。

このシーカーの目的は、先述した父・栄一の願いを叶えることともう1つあった。それは、空の裂け目が閉じる前に“破滅の門”を建設すること。こちらは栄一でも戒真でもなく、コラスの願いであったようだ。空の裂け目をキープすることで、異世界や他の惑星などからさまざまな戦士を招聘し、地球を終わらない戦いの世界にしようということらしい。

英寿たちは他のライダーたちと戦いながら、このシーカーの破滅の門建設を阻止しなければならない。

ここはラスボスと対峙するというクライマックスシーンなので盛り上がらないわけはないのだが、さらに新フォームの登場がその盛り上がりを後押しする。ただしそれが、『ギーツ』ではなく『リバイス』であるのは、本作が『リバイス』最後の映画であるから、なのだろう。昨年の冬映画が旧作の『セイバー』よりも新作の『リバイス』を全面に出していたのとは大きな違いだ。

一度は復活したものの、謎の時間制限によって再び消滅の兆候を見せたバイスを維持するため、デザイアドライバーで変身する一輝とバイス。これでデザイアロワイヤルの参加者として、ゲームが終了するまでは、その姿をとどめることができるらしい。

一輝がビートバックルを使って変身したのは、“仮面ライダーリバイ ビートフォーム”。デザイアドライバーでマスクのデザインも本作だけのオリジナルとなっている。さらにプロペラバックルも併用することで、“ビートアームドプロペラ”にも変身。バイスは、モンスターバックルを使い“仮面ライダーバイス モンスターフォーム”へと変身する。カッコいいか? と問われれば、そうでもないのだが、劇場版オリジナルの新フォームはお約束であり、ファンにとってのご褒美に近い。あって当然、なければ不満が出るという類のものなので、これ以上は言及しない。

これらの新フォームを身に纏ったリバイとバイスが、ギーツと共にシーカーに挑む。一瞬で防御壁を作り出すという建築系の特殊能力を発揮するシーカーとの目まぐるしいバトルは見ものである。中でもギーツのアクションのカッコよさは誰が見ても理解できるはずだ。

凄まじい存在感を発揮した人たち

本作では、そんな主人公たちの陰で凄まじい存在感を発揮した人たちがいる。

まずはギロリとコラスという二人の新旧ゲームマスターたち。ギロリが、コラスと一騎討ちをするシーンでは、ほぼ吹き替えなしの素面アクションが繰り広げられる。日本刀を手にした二人が見せる迫力の立ち回りは圧巻だ。

さらに何といっても、2022年に放送20周年を迎えた伝説の作品『仮面ライダー龍騎』から、3人ものオリジナルキャストが登場したことを語らないわけにはいかない。

主人公の城戸真司、ライバルにしてバディの秋山 蓮、さらに根強いファンの多い浅倉 威である。20年という時間は残酷だ。生まれたての赤ちゃんが成人式を迎え、若者は中年になる。『龍騎』においても、ボーカルグループ・純烈に参加して昔の面影がなくなってしまったメンバーもいる中、奇跡的に当時の面影をそのまま残していたり、そうでなくとも激シブになったりしているメンバーだけが厳選して集められた感がある。今から4年ほど前、『龍騎』のオリジナルメンバーを集めたスピンオフが作られたことがあったが、その時よりも渋さが増しているようにも感じた。

中でも当時と変わらぬ雰囲気を纏っていたのは蓮だ。多少ふくよかになり、当時のシャープさはなくなったが、それでも違和感のなさではナンバーワンだ。この蓮を演じる松田悟志さんは、仮面ライダー愛が深いことでも有名だ。当時はまだ、若手俳優が仮面ライダーなんかに出演したら、その後の役者人生に色がつくとして敬遠されていた時代。放送終了後、松田さんは所属事務所から、『仮面ライダー龍騎』に出演したことをプロフィールから消すことを打診されたそうだが、「それは恥ずかしいことではなく、誇りだ」として拒んだらしい。こんな熱さを持った俳優さんが、20年経った今また当時の役のままでカメラの前に立ってくれている、というだけでファンは涙ものである。

次に、見た目はかなり渋くなったものの、当時と演技のテイストが変わらなかったのは浅倉。これはまるで成長していないと『SLAM DUNK』の安西先生ばりにディスっているわけではなく、当時からそのドラマの中での立ち位置や演技が確立されていたことの証左に他ならない。さらに、王蛇のスーツアクターをオリジナルの岡元次郎さんが演じているのも胸熱すぎた。個人的には、本作のエンドロールが流れた際、最も興奮した出来事だったかもしれない。

主人公の真司は、良い意味でめちゃくちゃ変わったと思う。年齢なりの渋さを手に入れただけでなく、当時はどことなく薄っぺらかった演技が板についていた。リュウガと龍騎の演じ分けなども、当時よりずっと良かった。欲を言えば、龍騎の中に高岩成二さんが入って欲しかったけれど、それは流石に欲張りすぎかもしれない。

何故、彼らがこの戦いに参加しているのか、といった詳細はわからずじまいだったが、そこに存在しているだけで作品の評価を高めてくれるようなオーラがあった。本作のMVPは、間違いなくこの人たちである。まさしくレジェンドの名にふさわしい。

やはり「ライダーは助け合い」らしい

デザイアグランプリがデザイアロワイヤルになっても、ゲームの勝者は願った世界を叶えることができるようだ。

参加するライダーたちが、それぞれに自らが望む世界をカードに書き込む中、一輝だけは「俺は家族が守れればいい」と謙虚な姿勢を見せる。ただし、この戦いが終わり、バイスが再び消えてしまった時に、共に戦った日々のことをまた忘れてしまうことに対する寂しさを滲ませていた。

そこで英寿が望んだ世界とは・・・

ここまで書けば、ネタバレにも等しく、オチはすっかり透けて見えてしまう。

しかし、10年以上前に『仮面ライダーオーズ』の火野映司が口にした「ライダーは助け合いでしょ」の台詞が蘇る。新旧ライダーが肩を並べる劇場版では、半ば伝統のようなものになっているのかもしれない。オチが透けて見えていても、それでもやはりグッドエンディングはグッドエンディングなのだ。

TVシリーズでは少し哀しい終わりを迎えた『リバイス』が、この冬映画でようやく真のエンディングに辿り着いたのだ。そういった意味においては重要な作品だ。だが、そこに『ギーツ』や『龍騎』といった要素を入れ込まなければならなかったため、一輝とバイス以外の『リバイス』に登場したキャラクターたちの影が薄いことは残念でしかない。

まだまだ謎の多い『ギーツ』については、今後の展開のヒントとして、「浮世英寿はこの時代の人間ではない」という事実が告げられる程度である。以前、「いつからデザイアグランプリに参加してるの?」と問われた英寿が「西暦元年」と答えていたが、あながち冗談でもないのかもしれない。ただ、だとしたら2000年以上も生きているということになるわけで、果たして人間なのかもわからなくなってくるし、ギロリ以前のゲームマスター・コラスがその存在を知らないというのも変だ。そうなると、西暦元年からタイムリープをしてきたみたいな設定なのか? いずれにしても、「え? マジ??」みたいな驚きは特になかった。既に出ていた情報を捕捉する程度に過ぎない。「本作の中に今後の展開に関するヒントが散りばめられている」らしいのだが、それがこの情報だけでないことを切に願っている。答えはこれからの『ギーツ』で明かされるだろう。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

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