1971年4月3日放送『仮面ライダー』第1話「怪奇蜘蛛男」(監督:竹本弘一 脚本:伊上 勝)
既に50年も前の作品であるため、映像技術は今とは比べものにならないレベルだし、30分1話完結のシナリオはご都合主義満載だ。
しかし、それは今見るからそうなのであって、当時のクリエイターたちが心血を注いで作り上げた作品であり、日本中の子供たちを虜にしたからこそ、今へと繋がる人気シリーズとなったのだ。
最後までおつきあいいただければ幸いだ。
拉致るショッカー、拉致られる本郷猛
本作の主人公・本郷猛(ホンゴウタケシ)は、城北大学生科学研究室きっての秀才でスポーツ万能、バイク操縦のテクニックは天才的。しかも爽やかなイケメンという、まさに非の打ちどころのない青年である。
ある日、本郷は、バイクの練習中に謎の男たちに襲われ、拉致られてしまう。
気がついた時には手足を鎖で繋がれ、見た事もない手術室の中。
『仮面ライダー』と言えば、というお約束のシーンである。この後、5万ボルトの電流を流されるが、火傷一つ負わないのは、改造手術を施されたためだった。
本郷を拉致ったのは悪の組織「ショッカー」。「改造人間」による世界征服を目論んでいるらしい。
本郷が狙われたのは、優秀であるがゆえ。ショッカー首領によれば、そのIQはなんと600だとか。
コンピューターの基礎を開発した数学者、ジョン・フォン・ノイマンでさえIQは300程(300以上とされているが、明確なデータは不明)と言われていることを考えれば、人類史上最高の頭脳の持ち主である。
緑川博士
あとは脳改造さえ施せば、ショッカーの忠実なる下僕となる・・・というピンチを救ったのは、生化学研究の権威である緑川博士だった。
失踪したと思われていた緑川博士は、ショッカーに捕らえられ、人体の改造に手を貸していた。実は、本郷をショッカーに推薦したのも緑川博士だったのだが、本郷を救い出したのは、それに対する贖罪の気持ちだったのか。
初変身
ショッカーのアジトを逃げ出す二人。蜘蛛男と戦闘員が迫る中、本郷は仮面ライダーへと初の変身を遂げる。
この時点ではまだ「ヒーロー誕生」なんて輝かしい状況ではない。
ただ、やられないために、身を守るために力が発現したに過ぎない。
蜘蛛男vsバッタ男という、ショッカーの怪人同士の戦いである。
この後、緑川博士は蜘蛛男に暗殺されてしまうのだが、倒れた緑川博士を助け起こそうとする本郷を見た、緑川博士の娘・ルリ子に本郷は「人殺し」扱いされてしまう。
初回から悲哀がハンパない。
悲しみを乗り越えての初勝利
将来有望すぎる青年が、その能力の高さに目をつけられ、身体を勝手にバッタの能力を持った改造人間にされ、人殺しの汚名まで着せられてしまう。
しかも改造された身体は、その有り余るほどの力を制御することもできない。
水道の蛇口をひねっただけで、このようにねじ切れてしまったのだ。
まさに転落人生。
普通の生活さえ送ることができなくなった悲しみをこらえ、蜘蛛男を倒す本郷。
今見ても不気味な造形の蜘蛛男に、最後は飛び蹴りでとどめをさすが、まだこの時点では「ライダーキック」という名称は無いし、ドロップキックのように揃えた両足で蹴っている。
さらに言えば、この時点では「仮面ライダー」と名乗ってさえいないのだ。
こうして一人の改造人間となった男の戦いは幕を開ける。
終わりのない正義の物語「仮面ライダー」の始まりだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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