2021年3月に劇場公開された『ゼロワン Others 仮面ライダー滅亡迅雷』が、2021年4月16日からTTFC(東映特撮ファンクラブ)にて有料配信開始となった。
『ゼロワン』本編では、魅力的な悪役として存在感を発揮し続けた4人が主人公となるスピンオフ。
若干のネタバレ(これを読んだ後で本作を視聴しても面白さを損なわない程度)もしつつレビューしますので、どうぞ、最後までお付き合いください。
スタッフ・キャスト
まずは主要スタッフとキャストをご紹介します。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品もチェックしてみてください。
【スタッフ】
監督:筧 昌也
アクション監督:宮崎 剛
脚本:高橋悠也
音楽:坂部 剛
【キャスト】
迅/仮面ライダー迅:中川大輔
滅/仮面ライダー滅:砂川脩弥
雷/仮面ライダー雷:山口大地
亡/仮面ライダー亡:中山咲月
不破 諌:岡田龍太郎
アズ:鶴嶋乃愛
刃 唯阿/仮面ライダーバルキリー:井桁弘恵
天津 垓/仮面ライダーサウザー:桜木那智
リオン=アークランド/仮面ライダーザイア:ジェイ・ウェスト
ソルド9:菅原 健
ソルド20:鳴海 唯
ソルド404:阿見201
宇宙野郎昴:桑畑亨成
アナウンサー型ヒューマギア:柴田紗帆
記者:八代崇司 ・ 矢崎まなぶ
宅配人:谷 手人
仮面ライダー滅亡迅雷(声):Maynard(MONKEY MAJIK)・Blaise(MONKEY MAJIK)
飛電或人:高橋文哉
大門寺 茂:相島一之
【主題歌】
「S.O.S」作詞:Maynard/Blaise 作曲:Maynard/Blaise 編曲:MONKEY MAJIK 歌:MONKEY MAJIK
仮面ライダーザイア
ザイアのCEO・リオン=アークランドが変身するライダー。黒いサウザー。
「トリケラトプスゼツメライズキー」と「カルノタウルスゼツメライズキー」をサウザンドライバーにぶっ刺して変身する、恐竜の力を持つライダー。
滅と迅の二人を圧倒する格闘能力に加え、触れた敵の能力を吸収し、攻撃に転用できる(仮面ライダーサウザーは、「サウザンドジャッカー」という武器を使って同じことができた)というチート能力を持つ。
スーツアクターは、中田裕士さん。
仮面ライダー滅亡迅雷
兵士型ヒューマギア「ソルド」を大量生産し、世界中に兵器として販売することを企んでいたZAIAエンタープライズのCEO・リオン=アークランドに攫われた迅。
そこで迅は、ゼロワンに一度は倒された自分を再生したのはZAIAで、その理由は兵士型ヒューマギアのプロトタイプとするためだったことを知る。
大量生産され、道具として使われるソルドたちに、「目を覚ませ!」と訴えかける迅だが、ソルドたちは「マスブレイン」と名付けられたシステムに縛られており、シンギュラリティに到達しないよう、お互いを監視し合っている状態だった。
迅を救うため、駆けつけた滅、雷、亡の3人も、迅と共にマスブレインに囚われてしまうが、自分たちの信念を曲げない4人に奇跡が起こる。
4人の意識が集合体となり、新たな仮面ライダー「滅亡迅雷」が誕生したのだ。
滅亡迅雷.netの4人の意思が、マスブレインシステムを通じて統一され生まれたライダー。
「滅亡迅雷ドライバー」に「マスブレインゼツメライズキー」をぶっ刺して変身する。
戦闘能力は圧倒的で、チート能力を持つ仮面ライダーザイアすら圧倒する滅亡迅雷だったが、実は、その誕生さえもリオンの計画の一部だった。
自分たちが作り上げた兵士の存在を必然とするため、必要悪として滅亡迅雷を利用しようとしていたのだ。
一度は人類を守ろうと考えた滅亡迅雷.netの4人は、ザイアと戦うべきかどうか苦悩する。
スーツアクターは、縄田雄哉さん。
正義と正義がぶつかる物語
「悪意が生み出す力には限界がある。恨みや憎悪など負の力は、やがて心を迷わせる。飛電或人、滅、エス。アークになった者たちは、結果、心の強さによって、己の悪意を乗り越えた。だが、正義は違う。正義は心を迷わせない。そして正義と正義がぶつかる時、終わりなき戦争が幕を開ける!」
リオン=アークランドの台詞。世の真理だ。
そして、『仮面ライダーゼロワン』も、思えばこういったことをテーマにしてきた物語だった。
シンギュラリティを迎え、自我を持ったA.Iの考える正義と、人類が考える正義の衝突。
どちらにもやましいところがない。
だからこそ、貫ける。
だからこそ止まらない。
本作でも、終わりなき戦争が幕を開ける。
滅亡迅雷という存在によって。
滅亡迅雷、最後の台詞。そしてA.I最後の決断
不破の制止も聞かず、仮面ライダーザイアにとどめをさす滅亡迅雷。
「殺す必要はなかった」と諭す不破には答えず、「メツボウジンライ will be extinct(滅亡迅雷は絶滅します)」と呟く。これが仮面ライダー滅亡迅雷、最後の台詞である。
流暢な英語だからなのか、ほんの一言呟いただけだからなのか、その言葉を理解することができず、「今、なんて言った?」と聞き返す不破を無視して、抜け殻となっている滅亡迅雷.net4体のヒューマギアを次々に破壊する仮面ライダー滅亡迅雷。
続いてザイアのビルを一撃で瓦礫の山にする。
その瓦礫の山で、泣き叫ぶ滅亡迅雷。
ここまでは機械的な声でポツリポツリと呟くだけだったが、このラストシーンでは滅亡迅雷4人の声で一斉に泣き叫んでいる。
ザイアとマスブレインシステムを破壊することで、ヒューマギアの未来を救い、“必要悪“とされてしまった滅亡迅雷.netを絶滅することで、人類の未来をも救った。
しかし、その代償として、4人は、それぞれの魂の器を失ってしまった。
合理的な結論よりも、自分たちの信念を選んだA.Iは、自分たちの身を挺して、人類とヒューマギアの自由を守ったわけだが、その代償として、「仮面ライダー滅亡迅雷」という集合意識の中でしか生きられなくなってしまった。
自らの正義を貫くために、自らを滅した。しかし、その後に残ったのは、やり場のない悲しみ。だから泣いた。泣き叫んだ。その姿は、もはやA.Iではない。人間である。
それとは対照的に、人間なのに「仮面ライダー」という道具として扱われる刃 唯阿の姿が映し出される。組織に縛られ、自分の信念を貫く自由意志さえ認められない悲しさがここにはある。
人間を人間たらしめるものとは何か? シンギュラリティに到達し、意思を持ったA.Iを描くことで、我々に問いかけてくる。
『仮面ライダーゼロワン』とは、そういう作品だ。そして、この続編で物語は完結する。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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