「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」で有料配信(1,600円で7日間視聴可能)が開始された『仮面ライダーバルカン&バルキリー』を視聴。
これが最後の『ゼロワン』作品と考えると感慨もひとしおだが、最後を脇役に締めさせたというのも面白い。悪役である滅亡迅雷.netと、みんな大好き「ぶっ潰す!」の不破と刃というサブキャラたちの人気が伺える。
作品に対しては賛否両論の『ゼロワン』。私も「お仕事5番勝負」の件はどうにかならなかったものかと思っているが、各キャラクターたちの描き方は本当に素晴らしかったと思う。もう一つ残念に思っていることもあるが、それは後述する。
その最後の作品を、少々のネタバレ(これを読んでから本作を視聴しても、その面白さに傷がつかない程度)と共に、いっさいの忖度なしに本音でレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストをご紹介。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品もチェックしていただきたい。
【スタッフ】
監督:筧 昌也
脚本:高橋悠也
アクション監督:宮崎 剛
音楽:坂部 剛
【キャスト】
不破 諌/仮面ライダーバルカン:岡田龍太郎
刃 唯阿/仮面ライダーバルキリー:井桁弘恵
イズ:鶴嶋乃愛
天津 垓:桜木那智
迅:中川大輔
滅:砂川脩弥
雷:山口大地
亡:中山咲月
倖田和彦:伊藤正之
ソルド9:菅原 健
ソルド20:鳴海 唯
ソルド404:阿見201
A.I.M.S隊員:橋渡竜馬 ・ 竹中隼人
記者:八代崇司 ・ 矢崎まなぶ
海外の少女:アリッサ・T
ホームレス:久松龍一
アナウンサー型ヒューマギア(声):柴田紗帆
仮面ライダー滅亡迅雷(声):Maynard(MONKEY MAJIK) ・ Blaise(MONKEY MAJIK)
ソルドマギアたち:笠原竜司 ・ 池田優樹 ・ 大野桂子 ・ ハマムラキイチロ ・ 宮本大輔 ・ 安川桃香
飛電或人:高橋文哉
大門寺 茂:相島一之
【主題歌】
「Frontier」作詞:Maynard /Braise/TAX 作曲:Maynard/Blaise 編曲:MONKEY MAJIK 歌:MONKEY MAJIK
バルキリーは絶滅する
前作となる『ゼロワンOthers 仮面ライダー滅亡迅雷』でZAIAエンタープライズを壊滅し、CEO・リオン=アークランドが変身した仮面ライダーザイアを倒した仮面ライダー滅亡迅雷は、魂の抜け殻となった自分たち4人のヒューマギアをも破壊してしまったため、帰る場所を失い、4人の意思も失ったかのように無言で徘徊を続ける。
しかし、国防庁長官から滅亡迅雷の破壊指令を受けたA.I.M.S隊長・刃唯阿(ヤイバ ユア)が滅亡迅雷の前に立ち塞がった途端、「Valkyrie will be extinct」と呟き、刃に襲いかかる。
不破も現れ、バルカンとバルキリーの2人で立ち向かうが、まるで歯が立たない。まあ、何故だか基本フォームなので、敵うわけはないと思うが、それにしたって滅亡迅雷の強さは圧倒的。激しい攻防戦が繰り広げられるのではなく、バルカンとバルキリーがどれだけ攻めても意に介さず、静かに迫り、強烈な一撃を加えるという不気味さは、ライダー同士の戦いというよりは、自衛隊の猛攻の中を悠々と突き進むゴジラみたいな妙な迫力がある。
仮面ライダーバルキリー・ジャスティスサーバルが誕生する
滅亡迅雷によって、人間から解放された戦闘型ヒューマギア「ソルド」たちは、A.I.M.S壊滅のために暴徒と化すが、ただ一人、ソルド20だけは、元々国防のために配備される予定だったという理由で、刃と共に行動を始める。
「正義とは?」
前作『仮面ライダー滅亡迅雷』でも重要なテーマとして語られたこの問いに、唯阿は「命を守ること」だと答える。「”正義”という言葉の捉え方は、国や組織、立場によって変わるが、命を守るという行為は変わらない」と。
そんな唯阿の言葉に感銘を受けたのか、滅亡迅雷との再戦時、絶体絶命の唯阿を、自らの身を挺して救うソルド20。
彼女から受け取ったサーバルタイガーゼツメライズキーで、刃はバルキリーの最終フォーム・ジャスティスサーバルへと変身を遂げる。
「Courage is won by justice that protects lives(直訳:勇気は命を守る正義によって勝ち取られる)」
スピードを活かした攻撃を得意とするバルキリーと異なり、近接戦闘で本領を発揮するジャスティスサーバルに戸惑ったのか、苦戦を強いられる刃。最後は相討ちとなり、バルキリーはショットライザーが大破。滅亡迅雷もドライバーの半分が破損してしまう。
しかし、バルキリーの新フォームは、「とりあえず最後の記念に作りました」感が強かった。活躍するどころか、ほんの数分だけの登場。最後まで見ると、ストーリー上は仕方ないか、とも思うが、それにしたって、なんだか残念な扱いである。
冒頭で少し触れた『ゼロワン』の残念だったもう一つの点というのが、このバルキリーの扱いである。
作品の情報が解禁された当初は、TVシリーズ初の女性ライダー(レギュラー)として話題を呼んだバルキリーだったが、蓋を開けて見れば、バルカン人気の影に隠れ、そのうち変身さえしなくなってしまった。最初期のラッシングチーターのスピードを活かした戦いがとても良かったのに、あっという間に姿を消してしまったのは残念だったという他ない。
ゼロワンの無駄なフォーム(その場限りで、その後ほとんど使われなかったもの)を出すくらいなら、もう少しバルキリーを目立たせてあげて欲しかったと心底思っている人は少なくはないはずだ。
仮面ライダーバルカン・ローンウルフが誕生する
A.I.M.S壊滅のためにソルド20と決別したソルド9は、不破と出会う。
こちらでも正義についての問答が始まるが、不破は「都合よく暴力を振るうための言い訳」とバッサリ。
「正義を否定するなら、お前は何を理由に戦っているんだ?」と戸惑いを見せるソルド9に、「俺のルールだ」といつも通りの不破。「俺が守りたいものは守る。俺が気に入らないものはぶっ潰す」。
その後、「A.I.M.Sを壊滅させることが正義だ」と暴徒化したソルド404たちを見て、違和感を感じたソルド9は、その違和感(自分のルール)に従い、彼らを止めようとするが、逆にリンチを受けてしまう。その窮地を救ったのは、不破。
滅亡迅雷のこれまでの言動を振り返り、彼らの目的は「自らが倒されること」だと悟った不破に、ソルド9はダイアウルフゼツメライズキーを手渡す。
滅亡迅雷の居所を突き止め、戦いを挑む不破は、ダイアウルフゼツメライズキーにアサルトグリップを装着し、ゼロワンドライバーに挿入して変身する。もちろん、お約束の「キーのこじ開け」もアリ。
これまでのようにショットライザーを使わないため、自由になった両手を活かし、まるで仮面ライダー1号のオマージュのような新たな変身ポーズを見せてくれる。滅亡迅雷4人のことを思い出しながら変身するのも胸熱だ。
バッタのようにピョンピョン跳ね回るウルフにはちょっと違和感もあるが、ゼロワンドライバーの待機音は、やはり最高だ。ギターの音が鳴り響いた瞬間、体温が跳ね上がった気がする。決してコロナに感染したためではない。
「Registration! Vulcan Company Limited!(直訳:登録!株式会社バルカン!)」という変身音声の秘密は、是非、本作を視聴して確かめて欲しいが、その後に続く「It’s my rule(俺のルールだ)」という一言にシビれて憧れる。濃いめの青が眩しいローンウルフのデザインにもまたシビれて憧れる。
ただし、壊れてしまったショットライザーの代わりにゼロワンドライバーを使用する件は、なんだか無理がありすぎたとは思う。
滅亡迅雷は絶滅する
相変わらず何も語らない滅亡迅雷だが、ターゲットであるバルキリー/刃を求めて進み続ける。ここまでくると、ストーカーにさえ見えてくる。
そんな滅亡迅雷の想いを汲み取り、滅亡迅雷をぶっ潰しに立ち向かう不破。
なぜ執拗にバルキリーを狙うのか? という理由には疑問も残るが、とりあえずそういうことらしいから我々視聴者は「そうなんだ・・・」と飲み込むしかない。
滅亡迅雷4人との思い出を胸に、最終決戦に臨む不破。
4人の想いを受け止めようと、全ての攻撃を避けずに戦う姿は、まるでプロレスである。ドMなだけかも知れない。
そうして全てを出し切った両者は、決め技で雌雄を決する。
滅亡迅雷は絶滅し、彼らの願いを叶えた不破は倒れてしまう。
『ゼロワン』の物語は終結する
これで『仮面ライダーゼロワン』の物語は終結。他の作品へのゲスト出演などの機会はこれからもあるかもしれないが、作品としては終わり、ということになる。
最後は人類のために、人類の敵という役回りを引き受けた滅亡迅雷.netの4人。その4人の覚悟を正面から受け止め、ぶっ潰す不破。
ヒューマギアと人類が共に歩む未来のために、組織を離れ、新たな一歩を踏み出す唯阿。
A.Iと人類の対立と共存という昔から描かれ続けてきたテーマに真正面から切り込んだ『ゼロワン』は、厳しい現実を突き付けられながらも、自我を持つに至ったA.Iと共に、それを乗り越えようともがく人類の姿を描いた希望の物語だった。
残された者たちに未来を託し、覚悟を持って消滅していった滅亡迅雷.netの4人。
彼らの決意を受け継ぎ、その背中を追いかけるように進みつづける唯阿とヒューマギアたち。
その唯阿たちを、そっと後ろから見守る不破というラストシーンは象徴的だ。
滅亡迅雷との死闘の後、傷つき倒れた不破だったが、ラストシーンから推察すれば、命を落としたということなのだろう。
バックに流れるMONKEY MAJIKの「Frontier」も、間違いなく本作のことを歌っているのであろう歌詞が沁みる。
過去のシーンが走馬灯のようにフラッシュバックするエンドロールと共に幕を閉じる『ゼロワン』。
まだ見たことがないとか、途中でやめてしまったという方には、是非、ここまで見て欲しい作品である。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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