果てしなくダサい。
タイトル自体もダサいうえ、少しばかりマンガを上手に描ける子に3D映画のタイトルを任せたら、おそらくこういう図柄にするんじゃないか? というくらいベタなタイトルロゴにがっかりするが、それでも、このタイトルロゴが画面から飛び出してくるのを目にした当時の子供たちは歓喜したのかもな、と思うと、微笑ましくもある。
それもそのはず。この映画が公開されたのは1989年のこと。北海道夕張市石炭の歴史村に架設された3D立体映像館で、ほんの半年ほど上映されただけの作品だったのだ。
それでいて、仮面ライダーシリーズ初となる3D映画。現在配信されているものは通常の2D映像でしかないが、仮面ライダー史を語るうえでは外せない作品なので、レビューします。どうぞ最後までお付き合いください。
ストーリー
ベースとなる設定は、『仮面ライダーBLACK RX』。
クライシス帝国のジャーク将軍は、宿敵「仮面ライダーBLACK RX」を進化前の姿である「仮面ライダーBLACK」に退化させ、弱体化したうえで倒せば良いと考える。ある意味、天才。
過去の世界に引きずり込まれ、「BLACK」へと退化させられてしまった南光太郎に、一度は敗れた再生怪人軍団が襲いかかる。
絶体絶命のピンチに陥る光太郎の前に、「RX」「ロボライダー」「バイオライダー」の3人のライダーが現れ、窮地を救う。彼らは、3つのパラレルワールドから集まった3人の光太郎だった。BLACKに退化させられた光太郎も含めれば4人。まるごと全部、南光太郎だ。「マナカナ」と「ザ・たっち」を足したって敵わないだろう。なんたって、全て同一人物なのでだから。
そうして最後は、全ての光太郎が一つに融合(?)し、RXとして去っていく。
4人の光太郎が共闘
この4人のライダーが揃い踏みすること。それこそがこの映画最大の見どころだ。
仮面ライダーシリーズにおいて、複数のライダーが共闘するシーンはよくあるし、それこそが胸熱ポイントでもあるのだが、今回は異例中の異例となっている。
なんと言っても、主人公・南光太郎がフォームチェンジをすることで変身する3人のライダー(RX、ロボライダー、バイオライダー)と、RXに進化する前の形態であったBLACKの4人が同時に戦うのだ。
通常ならあり得ないが、パラレルワールドから4人の光太郎が集まったというトンデモ設定によって実現した、まさに夢の共演である。
この頃から、とりあえずパラレルワールドと言っておけば矛盾も何もないことになってしまうという、”パラレルワールド万能説”はあったようだ。
面白くはないけれど・・・
正直に言って、面白い作品ではない。
上映時間も約16分半と、TVシリーズ1話分にも満たない短編である。
しかし、見どころがないわけではない。なんといっても、仮面ライダーシリーズ初の3D映画。上映された1989年当時は、きっと驚きをもって迎えられたはずだ。今の目で見たら「なんじゃいこりゃあ・・・」と思わず呟くくらいのレベルではあるけれど。
この「3D映画だった」ということは、とても重要で、このことを理解したうえで見てみると、結構練り上げられた作品だったことがわかるはずだ。
上から飛びかかってくる敵を、下から見上げる1人称視点で撮影する冒頭から、すぐにそういったこだわりが理解できるだろう。もしも、「これは3D映画だった」ということを知らずに見てしまったという方は、この事実を踏まえたうえで再度見直して見て欲しい。きっと見え方が変わるはずだ。
ただし3D映像としての見せ方にこだわるあまり、CGはほぼ使っていない。それによって見え方が地味になっているだけでなく、不自然なワイヤーアクション(例えばライダーキックのシーンではバッとジャンプしてキックをズバッと決めるのではなく、ふわーんと持ち上げられて、敵を不自然になぎ倒すように見える)が目立つ。
それも、当時の3D映像技術のレベルと、予算の問題だと理解する他ないのだけれど。
いずれにしても、仮面ライダー史に残る1本であることに間違いはない。当時放映中で大人気だった「仮面ライダーBLACK RX」を題材とした割には色々ダサいとは思うけれど、ライダーファンを自認するなら見ておいて損はないだろう。
4人の光太郎が変身するライダーたちの共闘シーンなんて超レア映像も、この作品でしか見られないものだと考えればなおさらだ。
しかも、今見返してみると、スタッフもキャストも一切のクレジットがないという珍しい作品でもあった(東映の名だけは登場する)。
今、この作品を見るには、「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」を使う他ないだろう。特典映像として収められているDVDなどを探すのは厄介だし、そこまでしてでも見て欲しい作品というわけでもないからだ。
毎月定額で、歴代仮面ライダーシリーズなど、東映特撮を堪能できるTTFCで、何かのついでに見てもらえたら幸いだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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