2021年3月21日放送『仮面ライダーセイバー』第27章「哀しみを、笑顔に変えて。」(監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一)
禁書に身体を乗っ取られると、イメージの中に現れる謎の少年。どこか哀しみをたたえたその表情が、やけに気にかかる飛羽真。あの少年の悲しみの原因を知り、そして救いたい。仲間たちの理解すら得られないものの、飛羽真は自らの直感を信じ、謎の少年との対話を試みるのだった・・・。
セイバーの新フォーム登場となる第27章をレビュー。それなりにネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは今回のキャストをご紹介。
【キャスト】
神山飛羽真/仮面ライダーセイバー:内藤秀一郎
新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズ:山口貴也
須藤芽依:川津明日香
富加宮賢人:青木 瞭
尾上 亮/仮面ライダーバスター:生島勇輝
大秦寺哲雄:岡 宏明
ユーリ/仮面ライダー最光:市川知宏
ストリウス:古屋呂敏
レジエル:高野海琉
ズオス:才川コージ
少年:青木 凰
タッセル:レ・ロマネスクTOBI
復讐のレジエル
前回、セイバーに手ひどくやられたレジエルは、屈辱に身を震わせ、復讐に燃える。なんとしてでもセイバーを倒したいという一心で、ついには禁断の秘術にまで手を出してしまう。それは強大な力が手に入る代わりに、不死身の肉体を捨てざるを得ないという究極の力。ストリウスの手によって、ライドブックに新たなるページが書き加えられたレジエルは、レジエル・フォビドゥンへと進化、大幅なパワーアップを果たし、セイバーを誘い出すため暴れ回る。振り回す愛刀の名は「ボルヘスド」。
しかし飛羽真は、禁書・プリミティブドラゴンの力を制御するため、リベラシオン(ドラゴンボールの「精神と時の部屋」的な空間)に閉じこもり、禁書の力で暴走した時に現れる、哀しみをたたえた謎の少年と対話中。
そこで、尾上とユーリのふたりがレジエル・フォビドゥンを止めるため立ち向かうが、まるで歯が立たない。尾上はともかく、ユーリは世界で最初に生まれた2本の聖剣のうちの1本・光の聖剣の化身だぞ? さすがにこの弱体化は酷すぎないか? いつの間にか、主人公以外は全員ザコという状況になっている。
焼かれても焼かれても
謎の少年との対話を試みる飛羽真だったが、少年は一向に心を開いてくれる様子がない。
手を差し伸べる飛羽真に、その都度、容赦なく炎を浴びせる。
飛羽真は、何度焼かれても対話を続けるが、まるでコントである。
いや、そもそもこれだけ炎を浴びせられて生きてるとか、普通に凄すぎる。イメージの中だとはいえ、常人なら発狂するレベルだろう。飛羽真は炎の剣士だから、なのか? それにしたって、服も燃えないのはどうかしている。
エレメンタルプリミティブドラゴン
いつまでも心を開いてくれない謎の少年との対話に疲れ果て、リベラシオンを抜け出た飛羽真は、レジエル・フォビドゥンの暴挙を知り、その元へと向かう。その途中、崩壊した街で家族を見失い「みんなどこに行ったの?」と泣き叫ぶ少年を救う。その瞬間、謎の少年の哀しみの理由が、この家族を求めて泣いている少年と同じではないのか? と閃く。
変身して戦う飛羽真だが、レジエル・フォビドゥンの力は圧倒的。未だ制御できないとはいえ、あのプリミティブドラゴンの力を使ってもレジエル・フォビドゥンには敵わないのだ。止まらないパワーインフレの連鎖。
その飛羽真の前に、またも謎の少年が現れる。そこで「君が哀しむ理由を教えてくれないかな?」と問いかける飛羽真に、人とドラゴンが共存していた古の時代、ドラゴンを恐れた一部の人間たちによってドラゴン狩りが行われ、自分だけが生き残ってしまったと語る少年。
それを聞いた飛羽真は、小説家らしくその場で少年がひとりぼっちではないという物語を作って聞かせる。初めて笑顔を見せた少年に「俺とも友達になってくれないかな?」と手を差し出す飛羽真。少年は握手で応える。
ここに、ブレイブドラゴンとプリミティブドラゴンががっちりタッグを組んだ新フォーム「エレメンタルプリミティブドラゴン」が完成。
胸の前でブレイブドラゴンとプリミティブドラゴンががっちり握手したようなデザインが特徴的。全身を包む炎の色は赤、黄、青の3色。カッコいいか? と問われれば、即座にうなずくことはできないが、一見して強そうなデザインであることは確か。
レジエル・フォビドゥンはこれで完全消滅。最後はあっけないものだ。
封印された力の化身と、心の触れ合いを通じて力を手に入れるという展開は“ファンタジーあるある”で、目新しさは感じないが、どんな困難にも挫けず、苦しみ悩む誰かを救うヒーローの姿に、「ありきたり」なんて言葉を使うべきではない。
人の悩みなんて、その本質は昔から変わらない。となれば、その悩んでる人を救うヒーローだって、姿形は変わっても、その在り方は変わらないのだ。
『仮面ライダーV3』で主役の風見志郎を演じた宮内洋さんが、「特撮ヒーロー番組とは、子供たちに正義の心を教える教育番組に他ならない」と、語ったことがあるが、まさにそれ。我々は、つい大人目線で評論しがちだし、今の特撮ヒーロー番組が大人の視聴にも耐えられるようなしっかりした作りになっていることもそれを助長しているが、それでもやはり特撮ヒーロー番組は、最後は子供たちのものであるべきだ。
そういった意味において、『仮面ライダーセイバー』は子供たちが成長していくうえで見ておいて欲しいヒロイックな要素は十分。
ただ、禁書と言われるとんでもない力を秘めた本を、ドラマの折り返し点をちょっと過ぎた程度のタイミングで出してしまって良いのか? という大人目線での不安は残る。
先述したとおり、『セイバー』のパワーバランスは乱高下が激しすぎる。実際、あれだけパワーアップしたレジエルをあっさり倒してしまうのだから。
しかも、禁断の秘術によるパワーアップをしたレジエルは、これで一応はおしまいということになってしまった。まだ残り20話ほども残っているはずなのに、幹部がこうも簡単に切り捨てられて良いのか? と心配になる。
もうひとつ心配なのは、今回で姿を消したレジエルが蘇ってしまう可能性がゼロではないこと。メインライターが『仮面ライダーゴースト』の福田卓郎さんなだけに気になっている。
子供向けだから、安易に人は殺せないのかもしれないが、死んだ命は蘇らないということを徹底することで、命の大切さをも説いて欲しいと思うのだ。『ゴースト』は死んでも死んでも蘇る『ドラゴンボール』のような展開だったから、その二の舞にだけはなって欲しくない。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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