1966年3月20日放送『ウルトラQ』第12話「鳥を見た」(監督:中川晴之助 脚本:山田正弘)
とある町の動物園で不可思議な事件が起こる。
夜が明けると、檻は破壊され、全ての動物たちが姿を消し、見回りをしていた守衛も瀕死の重傷を負っていた。
その守衛が口にする。
「鳥を見た」と。
切なさと意味では『ウルトラQ』随一となる第12話をレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第12話のキャストをご紹介する。
なお、以下で使用している画像は全て『ウルトラQ』より引用している。
万城目 淳
佐原健二
戸川一平
西條康彦
江戸川由利子
桜井浩子
一の谷博士
江川宇礼雄
漁師:中山 豊
港市警・警部補:日方一夫
漁師(三郎の叔父)A:神田正夫
漁師(古代船発見者)B:勝本圭一郎
漁師(古代船発見者)C:坪野鎌之
年配の漁師:安芸津広
三郎少年:津沢彰秀
動物園守衛:馬渕功
飼育係:伊原徳
警官:満田かずほ
998年前の船
とある漁村に流れ着いた古めかしい船。いや、「古めかしい」なんて言葉では生ぬるい。明らかに時代がおかしい。
誰かが航海していた痕跡は残っているが、乗員は誰もいない。
ただ、小鳥が1羽いるだけだ。どこかから紛れ込んだのだろうか?
新聞記者の江戸川由利子が、万城目 淳たちと共に船の調査を行なっている最中、激しい揺れが起こる。
慌てて外へ飛び出すと、その船は目の前でボロボロと崩れ落ち、海の底へと消えていく。
それはまるで、止まっていた時間が急に動き出したかのよう。
跡形もなく消えた船。
そして、何処かへと飛び去った1羽の小鳥。
あの船は何だったのか?
由利子が持ち出した一冊の航海日誌には、998年前の日付が書かれていた。どうやら貿易船だったらしい。
998年もの間、海を漂っていたのか、どこかの時代からタイムスリップしてきたのかはわからないが、普通ではない。
さらにそこには、こう書かれていた。
「鳥を見た」と。
先日の動物園の守衛の言葉と同じだ。
998年前と現代が符合する。この言葉はいったい何を意味するのだろう。
ここで、話題は由利子が見た小鳥の話になる。
一の谷博士から「どんな鳥だった?」と尋ねられ、鳥類図鑑を捲る由利子の手が止まる。
それは、「ラルゲユウス」という名の鳥だった。
第三氷河期以前に生息していたという鳥の祖先で、40mを超える巨鳥だったらしい。
そんな太古の時代に生きていた鳥がいるわけがない。大きさも全然違う。
しかし、一の谷博士は語る。
「10世紀に、インドでラルゲユウスの大群が目撃されたという記録がある」と。
10世紀といえば、およそ1,000年前だ。
この船の年代とも符合する。
謎は深まる。
文鳥ときどき怪鳥
由利子が貿易船の中で発見した小鳥は、とある少年に保護される。
少年の名は三郎。
ただ一人、漁村に暮らす孤児である。実はこの三郎少年、次作『ウルトラマン』に登場するホシノ少年であることはファンにはおなじみだろう。
三郎は寂しかったのだろう。偶然保護した人懐っこい小鳥に「クロウ」と名付けて共に暮らし始める(資料によっては「クロオ」と表記されているものもあるが、劇中の台詞では「クロウ」と聞こえるので、そう記述する)。
白い鳥なのに「クロウ」と名付けた理由は、鳴き声が「クロウ」だったから。これは劇中で三郎が語っている。
この小鳥が、ラルゲユウスである。
大きさも全然違うのに何故? と思うが、空腹になると巨大化するというとんでもない鳥で、深夜、三郎が寝静まった頃に巨大化し、今度は三郎の村で飼育されていた家畜を襲う。朝が訪れた村に散らばる大量のニワトリの羽が、その惨劇を物語る。
古代怪鳥ラルゲユウス
身長:7cm〜50m
翼長:100m
体重:300g〜15,000t
出身地:第三氷河期以前の地球
やがて、村人からの通報と、一の谷博士のアドバイスを受けた警察が、この小鳥を保護することになる。
大の男たちが、文鳥ほどの大きさの小鳥を捕まえようと右往左往する様子がコミカルに描かれる。
そうして警察署に運ばれた小鳥は、見る見るうちに巨大化し、閉じ込められた檻を破り、ついには警察署の建物さえ突き破るほどの大きさとなって飛び立つのだった。
大人の階段
ラルゲユウスが向かった先は、三郎のいる村。
迫る巨大な影を、三郎と万城目たちは地に伏せてかわす。
特徴のある鳴き声で、その鳥がクロウであることに気づいた三郎は、変わり果てた姿に驚きながらも、必死で呼びかける。
しかし、ラルゲユウスは、そんな三郎の声を背に、何処かへと飛び去ってしまう・・・。
太古の鳥と、ひとりぼっちの少年の交流を描いた物語は、大空の彼方に消えゆくラルゲユウスの姿で幕を閉じる。
飛び去っていくラルゲユウスは、少年の中に残る幼さの象徴だろう。
つまりこれは、ひとりの少年が、1羽の鳥との出会いと別れを通じて成長していく物語。
人生は出会いと別れの連続だ。
そして、人は別れによって、より大きく成長する。失って初めて気づく、というやつである。
ひとりぼっちだった三郎にとって、クロウと過ごす日々はかけがえのないものだったろう。
こんな毎日が続けばいい、もしくは、この日常が永遠に続くと錯覚していたかもしれない。
しかし、現実は厳しい。
再びひとりぼっちの日々が戻ってくる。
少年は、否応なく大人の階段を上らなければならないのだ。
いつもなら、オープニングとして開始早々に流れるキャストやスタッフの紹介が、エンディングとして最後に流れるのも印象的だ。物悲しいBGMも、物語の余韻に一役買っている。
『ウルトラマン』の流れから遡って、いわゆる怪獣を期待して見ると肩透かしを食うけれど、いつまでも胸に残る切ない物語だ。切なさという意味では『ウルトラQ』随一と言って良い。
もしも本作をこれから視聴するのなら、「TSUBURAYA IMAGINATION」をオススメしたい。
他の動画配信サイトで探すのはなかなか骨が折れるからである。1話ごとにレンタルするくらいなら、1ヶ月500円ほどの料金を払って、気になるエピソードを好きな時に好きなだけ視聴できる方が絶対に良い。
このアプリを、実際に1年ほど使ってみた感想を別記事にまとめたので、こちらも参考にしていただければ幸いだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
\ 僕と握手! /