Blowin’ in the wind|『仮面ライダーW』第1話感想

雷堂

2009年9月6日放送『仮面ライダーW』第1話「Wの検索/探偵は二人で一人」(監督:田﨑竜太 脚本:三条 陸)

3人の男たち(白いスーツに身を包んだ中年の男(顔は見えない)と青年と少年)が何者かに追われている。その中の「おやっさん」と呼ばれていた一人の男が凶弾に倒れ、残された青年と少年も絶対絶命の危機に陥る。

そこで少年が手にしたアタッシュケースを開くと、中には手のひらほどの大きさを持つUSBメモリのようなモノと、不思議な形をしたガジェットが収められていた。

「悪魔と相乗りする勇気、あるかな?」

二人で一人の『仮面ライダーW』誕生の瞬間である。

そして1年後、風都と呼ばれるその町に一人の女性が訪れる。彼女は「おやっさん」と呼ばれていた男、私立探偵・鳴海荘吉の娘・亜樹子だった・・・。

こうして幕を開ける『仮面ライダーW』の第1話をレビュー。ネタバレも含むが、これから視聴する楽しみも奪わない程度にとどめておくので、安心して読んで欲しい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。

目次

キャスト

ここでは第1話のキャストをご紹介する。

ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。これは特撮に出演した俳優さんたちを応援したい、という趣旨である。

なお、以下の画像は全て『仮面ライダーW』より引用している。

左 翔太郎

左 翔太郎

桐山 漣

フィリップ

フィリップ

菅田将暉

鳴海亜樹子

鳴海亜樹子

山本ひかる

園崎冴子

園崎冴子

生井亜実

園崎若菜

園崎若菜

飛鳥 凛

真倉 俊

真倉 俊

中川真吾

津村真里奈

津村真里奈

山内明日

戸川陽介

戸川陽介

YOH

刃野幹夫

刃野幹夫

なだぎ 武(ザ・プラン9)

園崎琉兵衛

園崎琉兵衛

寺田 農

ナレーション:立木文彦

幼なじみの恋人を探せ

記念すべき初の依頼人は津村真里奈。主人公の私立探偵・左 翔太郎の幼なじみらしい。

その依頼内容は、姿を消した恋人・戸川陽介を探して欲しいというものだった。

早速手がかりを求めて風都を駆け回る翔太郎だったが、偶然、ビルが崩壊するという信じられない現場に遭遇する。しかも地盤沈下ではなく、ビルの土台の鉄骨が溶解したことが原因らしい。そんな自然現象などあり得ない。「ドーパント」の仕業だ。

この「ドーパント」というのは、『W』における怪人の総称で、「ガイアメモリ」(その名の通り、“地球の記憶”。絶滅した古代生物の力などを持つUSBメモリのようなアイテム)と呼ばれる本作のキーアイテムによって、超人的な力を持った者たちのことだ。

画像引用元:仮面ライダーW

今回登場するのはマグマ・ドーパント。その名の通り、マグマの力を持ち、鉄骨を易々と溶かすほどの超高熱を操る。

画像引用元:仮面ライダーW

その正体こそが、戸川陽介だった。

アパレルメーカー・WINDSCALEで働いていた戸川だったが、リストラされたことに逆恨みをし、ガイアメモリの力を使ってWINDSCALEの支店を次々に襲っていたのだった。

二人で一人の初変身

そのドーパントに立ち向かう翔太郎たちもまた「ガイアメモリ」を使って、超人・仮面ライダーWへと変身する。正義のために悪の力を行使する、というスタイルは、典型的な仮面ライダーの系譜である。

しかし、Wが明らかに新しかったのは、二人で一人の仮面ライダーだったことだ。言葉通り、フィリップと翔太郎の二人が変身して一人のライダーとなる。まるで『ウルトラマンA』みたいなもので、変身というより合体に近い。ただし合体と言っても、左右に二人がくっつくのではなく、一人にもう一人が憑依する。そのため、変身中は憑依した側の肉体は意識を失いその場に倒れ込んでしまうのだ。この設定が二人で一人という、不可思議な状況をほんの少し現実的にしてくれている。

フィリップが担当する右側をソウルサイド、翔太郎が担当する左側をボディサイドと呼び、ソウルサイドで属性を、ボディサイドで身体能力や武器を決める。3つのソウルメモリ(サイクロン、ヒート、ルナ)と3つのボディメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)の組み合わせで9通りの姿に変わることができる。

画像引用元:仮面ライダーW

変身ポーズは二人が左右対称となるように肘を曲げてガイアメモリを掲げる、というシンプルなものだが、二分割された画面上では「W」のカタチに見えるようになっている。ソウルメモリを装填すると変身待機音が鳴り響くのだが、これが何ともカッコいい。ボディメモリを装填した後、両手を交差させるようにして、閉じたWドライバーを開く様子も最高だ。あまりにもカッコ良すぎて、ついにCSMを購入してしまったことは別記事にまとめてある。

左右で色違いの『キカイダー』みたいなデザインには、当初、違和感があったが、シンプルでスリムな容姿はかなりスタイリッシュで、久々に用意されたマフラーも原点回帰を思わせる。

画像引用元:仮面ライダーW

手足がまるで藤子不二雄先生の『怪物くん』のように伸びたり、必殺技の「ジョーカーエクストリーム」で身体の左右が少しずれた状態でライダーキックをかますなど、CGを多用したアクションは初見ではイマイチ好きになれなかったが、決め台詞の「さあ、お前の罪を数えろ」にはシビれて憧れた。

画像引用元:仮面ライダーW

この第1話では二人の声が微妙にずれてしまっているが、これも今となってはいい思い出だ。

敵の名は

そんな彼らの敵が園崎家だ。

風都の名士である園崎琉兵衛と2人の娘たち。彼らこそがガイアメモリを作り、闇で売り捌く張本人である。物語の冒頭で「おやっさん」が命を落とした際に登場した異形は、娘の1人・冴子が変身したドーパントであったことも明かされる。

画像引用元:仮面ライダーW

このドーパントのデザインがいい。クリーチャーデザインは、あの寺田克也さんである。今後登場するドーパントにも期待しかない。

そして園崎琉兵衛を演じる寺田 農さんの存在感が絶妙だ。人の良さそうな柔和な笑顔を見せながら、その影にはどことなく凄みがある。「悪いやつらは天使の顔して心で爪をといでるものさ」という『宇宙刑事ギャバン』の主題歌を思い出す。ネコを愛でるのもいい。古来より、悪党にはネコが似合う。ドーベルマンや土佐犬を飼っているような悪党は三下であることが多い気がする。

要するに、悪そうに見えて悪いヤツなんていうのは小物なのだ。本当に悪いヤツというのは、一見しても悪い人には到底思えないことが多い。とんでもない犯罪を犯した人に限って、知的で社会性があるように見えていたというのは、これまでの歴史が証明しているようにも思える。

仮面ライダーのようなヒーローの活躍を描く物語において、敵はもっとも重要なファクターである。敵が恐ろしければ恐ろしいほど、魅力的であればあるほど、ヒーローが輝くからだ。そういった意味においても、『仮面ライダーW 』は頭抜けている。純粋に今後の展開が楽しみになる。

こだわりの数々

本作の舞台は、架空の街「風都(フウト)」。

その名の通り、常に風が吹いているという設定で、街にはあらゆる場所に風車が回る。これを考案したのは本作のパイロット監督である田崎竜太さんらしい。ちなみに最初は水の街・水都となる予定だったとか。

この風都にある「かもめビリヤード場」という古びた建物の2階にあるのが、本作のアジトとなる鳴海探偵事務所だ。この雰囲気がとても良い。“古き佳きアメリカ”をイメージしたような、少し古ぼけたアースカラーでまとめられた室内がとてもオシャレで、回転するサーキュレーター(天井に取り付けられたプロペラ)の影が断続的に映り込む様子も、いかにもアメリカの映像作品っぽい。

小道具に対するこだわりも素晴らしい。例えば本棚にはずらりと探偵小説が並んでいるが、中でもハードボイルド小説の代名詞「The Long Goodbye(レイモンド・チャンドラー著)」の存在感が際立つ。その邦訳版である「長いお別れ(清水俊二訳)」と「ロング・グッドバイ(村上春樹訳)」という訳者違いの2冊を、ハードカバー版と文庫版それぞれに揃えてあるのだ。しかも読み古された感もしっかりあり、ハードボイルドオタクという雰囲気がこれだけで十二分に伝わってくる。

ジャジーな雰囲気のBGMも素晴らしい。あまりインストに興味のない私でも、このWの劇伴だけは普通に聴き続けられる。特にクライマックスで流れる「ハードボイルド」という曲は、そのイントロが流れただけで体温が2度は上がった気になる。Apple Musicなどのサブスクでも聴けるので、どの曲? という方は是非チェックしていただきたい。

デスクに置かれた電話やタイプライターも良い味を出している。

画像引用元:仮面ライダーW

ちなみにこのオシャレなタイプライターは海外製でアルファベットしか使えない。主人公・左 翔太郎は、コレを使って事件の報告書などを作成しているが、英語ではなく全てローマ字なところに、目指すスタイルに実力が伴わない様子が現れている。PCを使えばもっとカンタンだろうに・・・とも思うが、今の時代に手間暇かけて、こんな骨董品を使うことに意味があるのかもしれない。エアコンもパワーウインドウもない旧車に乗る人たちのように、道具を単なる道具としてではなく、人生を共に歩む伴侶、もしくは相棒として捉えている節がある。人生を楽しんでいる、と言えるかもしれない。

ところで、このハードボイルドオタクがこだわり抜いたレトロな探偵事務所、というのは表向きでしかないことも知っておかなければならない。翔太郎の相棒・フィリップ(この名前は先述した「The Long Goodbye」に登場する私立探偵フィリップ・マーロウから取ったもの)が訳あって姿を隠している地下ガレージ(秘密基地)が存在するのだ。

画像引用元:仮面ライダーW

こちらは一転して未来的。ここでは、お助けアイテム・メモリガジェットや、巨大ビークル・リボルギャリーといった最新鋭のアイテムやマシンが作られ、整備されている。マグマ・ドーパントに襲われた際に使った、ワイヤーが飛び出す腕時計のようなものも、ここで作られているのだろう。

また、ライダーには必須のアイテムであるバイクも勿論登場する。

画像引用元:仮面ライダーW

サイクロンジョーカーカラーで前後塗り分けられた特徴的なデザイン。実は車体後部のユニットは換装することが可能で、それによって陸海空全てに対応できるという優れものである。

翔太郎によって「ハードボイルダー」と名付けられたこのバイク、ネーミングセンスはなかなかに微妙だが、デザインはかなりカッコいい。ベースマシンはホンダCBR1000RR。見ているうちに、その微妙な名前さえカッコいい気がしてしまうのが不思議である。

こうして見ると、本当に細部までこだわり抜いた設定であることがわかる。

ばら撒かれる謎

第1話の最後は、マグマ・ドーパントを倒しメモリブレイク(犯罪者の持つガイアメモリを破壊すること)を果たしたと思った途端、思わぬどんでん返しが待っている。果たして今回の真犯人は誰なのか? 1エピソードを2話構成で描くため、こういったミステリ的な作りが非常にしっくりくる。

第1話だから、ということもあるだろうが、実にさまざまな情報がばら撒かれる。冒頭で映し出される全ての始まり「ビギンズナイト」。おやっさんが誰なのか?

画像引用元:仮面ライダーW

何故、翔太郎たちはそこにいたのか? 幽閉されていたように見えるフィリップとはいったい何者なのか? それらの謎は持ち越されてしまう。物語のキーポイントとなる布石らしきものも多い。

画像引用元:仮面ライダーW

なお、謎ではないけれど、天才少年フィリップが検索する際に覗く「地球(ほし)の本棚」のCGは凄い。CGのセンスやクオリティはもちろん、CGでしか表現できない映像表現を採用したところが凄いのだ。個人的にCGを使いまくるのはあまり好きではないけれど、こういうものなら大歓迎である。

『仮面ライダーW』の放送終了から既に10数年が経つ。しかし、未だにこの作品を超える作品は無いと思っている(超個人的意見なので、他の方の意見を否定するつもりはない)。

その正統続編となるマンガ『風都探偵』がアニメ化されて話題になっている今だからこそ、原点であるこの作品を再評価してみたい。不定期ではあるが全話レビューしていくので、気が向いたらまたお立ち寄りいただきたい。

雷堂

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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