1977年4月20日放送『快傑ズバット』第12話「死刑執行10秒前」(監督:田中秀夫 脚本:田口成光)
とある山奥の町で、町民会館建設のために用意した2億7千万の現金が狙われる。
第7話に続き、メインライターではない脚本家を起用した回。
前回はどこか違和感のあるズバットだったが、今回は? 最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第12話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品なども是非チェックしていただきたい。
快傑ズバット/早川 健:宮内 洋
飛鳥みどり:大城信子
寺田オサム:中野宣之
警察署長/暗闇組組長:中田博久
山本良介:五藤雅博
ブーメランジャック:石川 敏
夕子:田村みどり
警官:五野上 力
新治:奥村真悟
首領L:はやみ竜次
ナレーター:青森 伸
東条進吾:斉藤 真
金と涙と男と女
町民会館建設費用として2億7千万円という大金を10年がかりで用意した、とある山奥の村。村なのに「町民」なのかよ? といったツッコミは無しである。ちなみに村の郵便局の名は「西町郵便局」。書いているだけで混乱してくる。
その大金を保管する町の郵便局が、警察官に変装した男たちに襲撃される。金は奪われ、若き郵便局員・新治は銃で撃ち殺されてしまう。新治は郵便局長・山本の娘・夕子の許嫁だった。
金も、新治の命も奪われ、泣き濡れる二人の前に現れた警察は、あろうことか山本を犯人として連行してしまう。
用心棒・ブーメランジャック
『ズバット』といえば毎度登場する悪党と、その用心棒である。思えば『ウルトラマン』も『仮面ライダー』も、当時は怪獣や怪人が花形であった。毎回、どんな敵が登場するのかが楽しみだったわけで、当時人気だった怪獣消しゴムやライダーカードも、どれだけ多くの怪獣や怪人を集められるかが、友達に自慢できるかどうかのポイントだったのだ。ウルトラマンや仮面ライダーを引き当ててしまうことは、どちらかといえばハズレだとされていたように思う(ひょっとしたら私の周りだけかもしれないが)。
今回はブーメランジャック。
なんだか石油王みたいな出立ちだが、顔だけ見ると、日本各地のお宅を探訪しているあの人のようでもある。どんなに無茶苦茶な間取りでも、絶妙にずらした論点で褒め倒してくれそうである。
武器はその名のとおり、ブーメラン。『ズバット』といえば、釣師だとかトランペット吹きだとか、ちょっと変わり種の用心棒が多い中、今回は随分とそれらしい用心棒である。
お約束の日本一対決では、必殺の「ブーメランカッター」で、村の御堂の看板を一撃で真っ二つに切り裂くジャック。確かに凄腕だ。オーストラリアにだって、これほどの腕の持ち主はいないだろう。
しかし早川は、同じブーメランのひと投げで、ジャックが切り裂いた看板を元の位置に設置し直し、ジャックの取り巻きの黒服たちのズボンのベルトをも切り裂くという超絶テクを披露する。
この後、コントのように黒服たちがオシャレなブリーフ姿を披露するが、目の毒なので、ここでは自粛する。
黒服たちのサービスショットが見たい方は、「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」でどうぞ。
暗闇組
最近、村に現れるようになったという暗闇組。その組長こそが、今回のボスであるわけだが、いつもと違って、名もなき組長である。ちょっとぐらいの汚れ物ならば、残さず全部食べてくれそうな感じだ。ラメ入りのシャツがダンサーみたいでもある。
ところがこの組長、表の顔は、この町に最近赴任してきた警察署長。
警察を牛耳る暗闇組。日本は平和だと誰が言ったのか。
しかもこの署長は、なぜか罪人を裁く権利まで与えられている様子。無実の罪で捕らえた山本を、口封じのために公開処刑するという。ここまでくると、どこかのテロリストみたいである。
処刑される郵便局長
ここは本当に日本ですか? と声を大にして聞きたくなるほど、時代も場所も超越した雰囲気で執り行われる処刑。なんだか吉田戦車のマンガに出てきそうなキャラである。
それを阻止せんと、ズバッカーで駆けつけるズバット。
「無実の人を罪に陥れニセ警察署をつくり、あまつさえ町民館をつくるための町の大切な金を奪ったニセ警察署長、いや、暗闇組組長、許さん!」
こうして文字に起こすと、どうも意味がわからないが、とりあえずブーメランジャックと暗闇組組長を得意のムチでぶっ倒すズバット。処刑執行間際で救われた山本親子は涙の再会を果たす。
そしてズバットが立ち去った後、現場に駆けつけた本物の警察と空気ヒロイン・みどりと家出少年・オサムの前に、早川が呑気に現れる。「どこ行ってたんだよ?」と口を尖らすオサムと、「もうとっくに事件はズバットが解決しちゃったわよ」と、まるで今までそこで見ていたかのようなことをほざくみどり。
なんだか『ウルトラマン』みたいだ、と思っていたら、今回の脚本家・田口成光さんとは、『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンA』など、第2期ウルトラシリーズの脚本を担当していた方だった。納得である。
しかし、最初に危惧していたとおり、『ズバット』は長坂さんの脚本でないと、どうにも違和感が出る。第7話よりは『ズバット』らしかった気もするが、最後で台無しだ。全てが大味に見える『ズバット』でさえ、ほんのわずかなさじ加減で全く印象が変わってしまう。世界観というのは、こんなにも繊細なものなんだと改めて理解できたエピソードだった。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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