2022年1月23日放送『機界戦隊ゼンカイジャー』第44カイ「SD=スモール+デッカイ?!」(監督:山口恭平 脚本:香村純子)をレビュー。
スーパー戦隊にはお約束の追加戦士として登場したツーカイザーこと、ゾックス・ゴールドツイカー。
と言っても、彼の目的は地球を守ることではない。SDトピアの力で姿を変えられてしまった、弟のリッキーとカッタナーを元の姿に戻すこと。そのためにこれまでゼンカイジャーと共に戦ってきたワケだが、ついにその旅も終焉を迎える。
宿敵とも言えるSDワルドの登場に、いつにも増して熱いゾックスの最期(?)の勇姿を刻みつけてみたい。見どころを中心にレビューします。ネタバレも含みますが、最後までおつきあいいただければ幸いです。
キャスト
まずは今回のキャストをご紹介。本作初登場でウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしてみてください。「え? あの作品に出ていた人?」といった発見があるかもしれません。
【キャスト】
五色田介人/ゼンカイザー:駒木根葵汰
ジュラン/ゼンカイジュラン(声):浅沼晋太郎
ガオーン/ゼンカイガオーン(声):梶 裕貴
マジーヌ/ゼンカイマジーヌ(声):宮本侑芽
ブルーン/ゼンカイブルーン(声):佐藤拓也
ゾックス・ゴールドツイカー/ツーカイザー:増子敦貴
セッちゃん(声):福圓美里
カッタナー(声):鈴木峻汰
リッキー(声):松田颯水
ボッコワウス(声):中田譲治
ゲゲ(声):福西勝也
SDワルド(声):内田直哉
ステイシー:世古口 凌
フリント・ゴールドツイカー:森 日菜美
スーさん:喜多川2tom
五色田ヤツデ:榊原郁恵
ついに登場、SDワルド
ついに姿を現したSDトピアの力を持つSDワルド。
『電子戦隊デンジマン』に登場した巨大ロボ「ダイデンジン」をモチーフにしたマスクがイカしている。ひょっとしたら、このデザインを見て「なんでまたスーパー戦隊を悪のモチーフに使うんだよ!?」と苛立つ方もいらっしゃるかもしれないが、私は素直に「やられた」とニヤけてしまう側の人間である。
パロディなのはわかるけれど、なんだか強そうに見えてしまうのは、『デンジマン』を知っているからこその脳内補正が働いているからなのかもしれない。
さらに、武器の鉄球・トゲ付きDボールのモチーフは「デンジボール」であり、必殺技のSDスパークは「デンジスパーク」が元ネタであるという点も見逃せない。実に徹底している。
しかもSDスパークは、単なるビーム攻撃ではない。そのビームに当たったものは、即座にSD(スーパーディフォルメ)化してしまうのだ。人間もキカイノイドも、レゴブロックのキャラクターみたいになってしまう。「カラフル」の常連・スーさんはおろか、介人を除くゼンカイジャーの4人もSD化させられてしまった。
こうして無力化した者たちをトゲ付きDボールで粉砕するという、なかなかエグい攻撃をするのである。
冷たい雨、ほとばしる熱気
長い間、探し求めてきたSDワルドを目の前にして、武者震いするゾックスとフリントたち。いつも以上に気合が入ったフリントが、ゾックスを援護しようと前に出すぎたところをSDスパークで狙い撃ちにしようとするSDワルド。
フリントを救おうと身を投げ出したゾックスは、ギアダリンガーをSD化させられてしまう。これでは戦うどころか変身もできない。
「お前らがいると、俺が本気で戦えねえ」と、フリントたちに釘を刺し、単身、SDワルドを探すゾックスは、介人からの共闘の申し出すら断る。ゾックスがここまで頑ななのは、父親に命を救われた過去が関係していた。自分を救ってくれた父親は、その際に命を落としてしまったらしい。そんな父親の背中を見てきたからこそ、自分がゴールドツイカー一家の長として、家族を守らなくてはならない、という覚悟ができているようだ。
落ち込むフリントたちに、「武器持って暴れるだけが戦いじゃねえんだなあ・・・」と、まるで相田みつをさんのような言葉をかけるジュラン。この責めるでもなく、慰めるでもなく、何かしら気づいて欲しいというところに、いかにも年長者の包容力が感じられて素敵。フリントたちもハッとなる。
一方、ゾックスは、SDワルドを発見する。変身できないことは承知の上。それでも、銃と剣を携え、SDワルドに挑みかかる。
吐く息が白くなるほどの気温の中、土砂降りで、さらに足元も水場という過酷なアクションを、ゾックス役の増子さんが熱演。文字どおりの熱演だ。変身できないという状況なので、当然、素面アクション。動いているとはいえ、雨で体温も奪われ続けるだろう。しかし、そんな辛さはまるで見せない。剣を振るい、水場に転がる。ゾックス最期の戦いにふさわしい、気迫あふれるシーンとなっている。
ここに、介人も参戦する。「お前は勝手にしろ、俺も勝手にする」とゾックスに言い放つ介人。よくある意地の張り合いだが、そこがいい。雨は上がるけれど、二人ともずぶ濡れである。いつもの「全力全開!」といった天真爛漫な介人とは違う、駒木根さんのシリアスな演技も、ゾックスのラストバトルに花を添える。
さらに、フリントたちも駆けつける。リッキーとカッタナーは、既にSD化されているということで、ゾックスの盾となり、フリントは自慢の技術力でSD化したギアダリンガーに対応したセンタイギアを用意した。
「あーあ。誰も俺の言うこと聞かねえ。ゴールドツイカー一家の長としちゃあ、まだまだだな」と空を仰ぐゾックス。その表情は、言葉とは裏腹に嬉しさに満ち溢れている。
そして最後の変身は、ミニチュアサイズのギアダリンガーで踊る。足元は水場だが、そんな条件はものともせず、キレのあるダンスを見せてくれる(同じような水場で踊るシーンは以前にもあった)。これが本当に最後かと思うと、やけに感慨深い。
呪いを解く方法を求めて
触れた相手をSDキャラにしてしまうSDスパークが、巨大ロボ戦になった途端にパワーアップする。
今回のタイトルどおり、Sのビームは「スモール」で、触れたものを小さくし、Dのビームは「デッカイ」で、触れたものを大きくしてしまう。小型化されたゼンリョクゼンカイオーも追い詰められ、絶体絶命のピンチに陥ってしまう。
今回はゾックス最後ということもあり、巨大ロボ戦のトドメもゾックスかな? とチラッと考えたが、ここではゼンリョクゼンカイオーのピンチを救う程度だった。しかし、むしろ良かったと思う。「最後だから」というだけで、オイシイところを全部持っていかせる必要はない。特に今回は、変身ができなくとも仲間のために命をかけるゾックスと、彼を支えるフリントたちの姿こそが最大の見せ場だったワケで、それ以外にもうひとつ山場を設ける理由なんてない。ただのクライマックス潰しになってしまうだけだ。
そうしてSDトピアは解放されたのだが、リッキーとカッタナーの呪いはまだ解けない。解放されたSDトピアで、その呪いの解き方を探さなくてはならない様子だ。
介人たちが見送る中、「サラバーイ♪」と去って行くゾックスたち。別れはいつもどおりが良い。今生の別れとしないためにも、あえて特別な別れ方をするべきでない、と思う。世界海賊たちよ、また会う日まで。
と言っても、おそらくその日はすぐだろうけれど・・・。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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