2022年9月17日放送『ウルトラマンデッカー』第10話「人と怪獣」(監督:越 知靖 脚本:根元歳三)
GUTS-SELECTの副隊長であるカイザキ サワの過去の因縁に絡めて、その人物像を深掘りするエピソード。
いつも難しい顔をしていることの多いカイザキが、笑顔を見せる珍しい回でもある。しかし、恩師との邂逅、そして決別・・・ラストシーンまで、常に切なさも漂う。そんな第10話をレビューする。ネタバレも含むが、これを読んでから本編を視聴してもガッカリするほどではないので安心して読み進めていただきたい。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
キャスト
ここでは第10話のキャストをご紹介する。
本作初登場でウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品など是非ご参照いただきたい。
なお、以下で使用している画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。
アスミ カナタ
松本大輝
キリノ イチカ
村山優香
リュウモン ソウマ
大地伸永
カイザキ サワ
宮澤佐江
ムラホシ タイジ
黄川田雅哉
ハネジローの声※画面左
土田 大
シゲナガ マキ
科学班員:橋本祐樹
ウルトラマンデッカー:岩田栄慶
ネオメガス:梶川賢司
キングゲスラ:新井宏幸
サドラ:矢倉翔太
怪獣を襲う怪獣
突如、姿を現す怪獣。
いつもなら、それを倒すのはGUTS-SELECTであり、ウルトラマンデッカーであるはずだ。
しかし、ここ最近は街を破壊する怪獣たちを倒す、まるで“怪獣殺し”とでも呼べるような謎の怪獣が現れていた。
倒された怪獣は2体。
海獣キングゲスラと岩石怪獣サドラ。
キングゲスラは『ウルトラマン』に登場したチョコレート好きな海獣ゲスラが後年進化(?)したものだが、デザインはほぼ一緒。
海獣キングゲスラ
身長:68m
体重:21,000t
↑※上掲画像の左下にチラリと見えるのがサドラだ。
岩石怪獣サドラ
身長:60m
体重:24,000t
『帰ってきたウルトラマン』に登場したサドラは、今回はほぼ登場していない。
しかし、もう一体のキングゲスラについては破壊光線を口移しで喰らわされ、内部から爆死させられるという壮絶な最期を遂げている。
ちなみに私はこのシーンを見て、『スペースバンパイア』という古い映画を思い出した。人間の精気を吸い取るコウモリ型生命体(普段は美女の姿をしている)が宇宙から飛来するというもので、その精気を吸い取るシーンというのが何故か想起されてしまった。今見ると、どうってことない映像だが、当時は最新のFSXを駆使した作品として結構話題になったものだ。それまではバンパイアというと、首筋に噛み付いて生き血を啜る、というのが当たり前だったが、この作品ではキスをするように向き合った状態で目や口から相手の精気を掃除機のように吸い出すというのが新しかった。映像的には『ゴーストバスターズ』っぽい雰囲気もある。
複数の怪獣が登場して暴れまくるといったエピソードは、ウルトラシリーズでは珍しいものではない。しかし、怪獣だけを相手にし、それ以上被害を拡げないという怪獣は珍しい。まるで怪獣から地球を守るために戦っているようである。
この謎の怪獣に関する情報を集めるため、カイザキ副隊長を中心に捜索が進められる。果たしてこの怪獣の正体は?
過去の因縁
捜索が行き詰まる中、カイザキは一人の人物を思い出す。
それがシゲナガ マキ。かつての恩師であり、怪獣研究の第一人者である。
きっかけは、リュウモンが発見した怪獣の不自然な行動だった。
暴れ出そうとする一瞬、急に動きを止めて地中へと姿を消す。これが過去2回出現したどちらにも見られた行動で、しかもその際の脳波がほぼ同じであることもわかった。
ここからカイザキが推察したのは、この怪獣が誰かに操られているかも知れないという可能性。
そこで思い出したのが、クローン技術で作り出した怪獣をコントロールして兵器化するという研究をしていたシゲナガだった。
この予想は的中。
シゲナガとカイザキは運命的な再会を果たす。
シゲナガが創り上げた怪獣の名はネオメガス。
彼女は、人間が怪獣をコントロールすることこそが、スフィアの襲来と次々に現れる怪獣に対するカウンターとなり得ると考えていたのだった。
シゲナガが全てを注いだネオメガスとウルトラマンデッカーの対決。カナタがデッカーであることがバレないのが不思議なほどのシチュエーション。
ただでさえ強力なネオメガスだが、カイザキがシゲナガの持つ制御装置のペンダントを破壊したことでリミッターが解除されてからは、デッカー必殺のセルジェンド光線すら真っ向から打ち消すほどの絶大な力を見せつける。
そんなデッカー最大のピンチを救ったのは、ハネジロー。 GUTSホークでデッカーを抱え込み、スピードを上乗せする。まるで『マジンガーZ』のジェットスクランダーだ。
ここでデッカーはストロングタイプへとタイプチェンジ。スピードに加え、パワーもマシマシにしてネオメガスに全身全霊の一撃を加える。
人と怪獣
怪獣という脅威を支配下に置くことこそが、人類にとってベストだと考えるシゲナガ。確かにそれは一見合理的に思える。自然を支配しようとする西洋的な発想のようにも感じる。
しかし、カイザキはその方法論には否定的だ。
元々は自分が住んでいた街が襲われたことがきっかけとなって怪獣の研究を始めたカイザキだったが、研究すればするほど、怪獣というものが単なる災害のように人類を脅かすだけの存在ではなく、むしろ人類の環境破壊などの迷惑を被っていることもあるのだという事実に気づいていた。彼らもまた人類と同じく地球に生きるものなのである。
だからこそ、怪獣を支配下に置いて、時には兵器として扱うといったシゲナガの考えには反対なのだろう。それは生物の尊厳を奪う行為であるためだ。
そんな考え方を「理想主義」と鼻で笑うシゲナガに「(人であっても怪獣であっても)一つでも多くの命を救いたいだけです!」と叫ぶカイザキ。
悲痛な表情に被さるように、エンディング曲「カナタトオク」が流れる。
不器用な僕たちは 気づけばまた空回り
何故だろ・・・ずっと繰り返し
遥か彼方に輝く星を見上げている
いつになればあの高みへ たどり着ける
でも今はまだ自分らしく下手くそな夢抱いていこう
きっと誰もが同じ「悔しさ」を背負ってるんだ
ただがむしゃらに走ればいい あきれるほど真っ直ぐに
いつかまばゆいヒカリの中で その願いは叶うから
引用元:「カナタトオク」影山ヒロノブ
良い曲だとは思っていたが、今回はやけに染みる。
若くて経験値の低いカナタたちにぴったりだと思っていたこの曲が、既に副隊長という立場にあるはずのカイザキにもどこか当てはまることに驚くし、人間なんて幾つになってもそんなものだということを感じさせられる。年長者である恩師・シゲナガとの対比も手伝ってのことだろう。
カイザキは理想とする世界に手が届くのだろうか?
現実に生きる我々も、いつか届くかどうかもわからない、そんな夢に向かって、どこまでもがむしゃらに走っていきたいものである。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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