2022年12月17日放送『ウルトラマンデッカー』第22話「衰亡のバズド」(監督:辻元貴則 脚本:足木淳一郎)をレビュー
地球人を憎み、スフィアによる地球の滅亡を企むバズド星人・アガムスの、その憎しみの根源はいったいどこにあるのか?
これまでは「地球人がスフィアを連れてきたため、バズド星が滅亡したから」という、なんともふわっとした理由しか語られてこなかったが、その詳細がついに明かされる。
「地球人がスフィアを連れてきた」というのは如何なる状況だったのか? 偶然か、それとも侵略の意志を持ってのことか。
ネタバレも含むが、最後までおつきあいいただければ幸いだ。
※なお、以下で使用している画像は全て『ウルトラマンデッカー』より引用している。
アガムスの誘い
前回のラストで、アガムスの操るテラフェイザーからスフィア反応が計測されていた。
アガムス
小柳 友
ここから考えられることは、テラフェイザーの中にスフィアが取り込まれているということ。だからこそ、テラフェイザーの完成お披露目会の際、怪獣たちがテラフェイザー目がけて襲いかかってきたのではないか(地球の怪獣たちは、スフィアを敵視している節がある)と予想するムラホシタイジとカイザキサワ。
ムラホシ タイジ
黄川田雅哉
カイザキ サワ
宮澤佐江
そんな二人の会話に突如、アガムスが割り込んでくる。
大胆にもアガムスは、ムラホシを自らのアジトへと招待する。罠とは知りながらも、彼の元へと向かうムラホシ。他のGUTS-SELECTのメンバーは、アガムスを遠巻きに包囲し、その動向を見守る。ライフルの照準をアガムスに合わせるリュウモンたちに「安全装置は外しておきなさい」と命じるカイザキ。画面越しにも緊迫した空気感が伝わってくる。
リュウモン ソウマ
大地伸永
キリノ イチカ
村山優香
アガムスと二人きりになったムラホシは、ずっと気になっていたことを質問する。「何故そこまで地球人を憎むのか?」と。
ここからアガムスの思い出がたりが始まる。
忘られぬ光景
地球人が宇宙へ進出する遥か未来。そこはアガムスが生きていた時代。アガムスは、妻のレリアと愛犬ファスティ(何故か芝犬なのは、ご愛嬌である)と共に惑星バズドで幸せに暮らしていた。
レリア
藤山由依
そんな幸せで平穏な毎日は、地球人たちの乗る宇宙船がバズドに不時着したことをきっかけにして雲行きがおかしくなる。
謎の生命体スフィアと戦いを繰り広げているという地球人たちの話を聞いたアガムスは、バズドの科学力があればスフィアを打倒できると信じ、地球人たちに力を貸すが、スフィアの力は想像以上に強大だった。さらに悪いことに、スフィアはバズドを標的にし、襲いかかる。
ある日、バズドの地表に攻撃を仕掛けてきたスフィアソルジャーの群れ。その攻撃によって、アガムスはレリアとファスティを失ってしまう。
ついさっきまで他愛もないことで笑いあっていたレリアが、ほんの一瞬、たった一度の攻撃で跡形もなく消えてしまった。
その光景は忘れたくとも忘れられぬものだったろう。
最愛の家族を失い、絶望の淵に立ったアガムスは、地球人がバズドに不時着さえしなければ、もっといえば宇宙に進出などしなければ、こんな結末を迎えることはなかったはずだと考える。そうして地球人は、アガムスにとって憎しみの対象となったのだった。
愛する家族を失った悲しみを「わかる」などと容易く口にすることは憚られる。しかし、だからと言ってアガムスのその後の行動(地球人が宇宙へ進出する前に根絶やしにするため、スフィアを引き連れて過去へ飛んだ)は、控えめに言っても“異常”だ。理に適った行動というよりは、単なる逆恨みであり、八つ当たりにしか思えない。
ただし、そのことについてはアガムス本人も理解している。以前、同じ未来からやってきたデッカー・アスミに「こんなことをしてもバズドは救えない。ただ、バズド星が地球と遭遇しないもう一つの未来が生まれるだけだ」と嗜められた際には、「ただの復讐」と言い切っていた。
それだけではない。
アガムスにとっては、自分自身も憎しみの対象だった。バズドの科学力を過信し、地球人に手を貸した。そのことさえも許せなかったのだ。
過去を変えることで未来をも変え、その未来へ戻って平和に暮らすつもりなど毛頭なかった。自らを犠牲にしてでも地球を滅ぼしたいという一念。これは片道切符のバンザイアタックである。だからこそ、自らの前に立ち塞がるデッカーを倒すため、テラフェイザーをスフィアを取り込んで強化した。その結果、自分自身までスフィアに侵食されていたわけだ。
56年ぶり
そんな思い出がたりが一段落したところで、アガムスはおもむろに何かを取り出す。それはかつてカイザキの師であったシゲナガ マキが所持していたペンダント型のコントロール装置に酷似していた。どうやら見よう見まねで作ったものらしい。ムラホシを警護するために集結しているGUTS-SELECTを一網打尽にしようと用意していたようだ。
以前、シゲナガが使役していた怪獣・ネオメガスの思い出が蘇る。デッカーを苦しめた強力な怪獣だった。あの恐怖が再び・・・と思ったところで、アガムスが呼び出したのは、まさかの有翼怪獣チャンドラーだった。
有翼怪獣チャンドラー
永地悠斗
『ウルトラマン』第8話「怪獣無法地帯」に初登場してから、なんと56年ぶりの再登場となった懐かしの怪獣である。コウモリのようにも見えるが、『ウルトラQ』に登場したペギラのスーツに長い耳をつけただけ。資金難だった円谷プロの苦肉の策というヤツで、低コストという意味においては、ゴジラにエリマキをつけただけのジラースと良い勝負である。
しかし何故、今さらチャンドラーなのか。子どもたちはともかく、長年のウルトラシリーズファンの頭には「?」が踊ったことだろう。
というのも、それほど強力な怪獣というイメージがないためだ。仮に呼び出したのが、ゼットンだというなら理解できる。何しろ決戦の末、ウルトラマンを倒したほどの怪獣である。しかしチャンドラーは、ウルトラマンと直接対決したことさえない(初登場の際は、レッドキングとの戦いに敗れ、姿をくらましてしまった)のだ。
そのため、コアなファンなら、「56年ぶりにウルトラマンと戦うのか?」と胸を熱くしたかもしれないが、結果は逆で、アガムスが何らかの罠を用意していると予想し、それなりの準備をして臨んだGUTS-SELECTの手によってあっけなく倒されてしまうのだった。いわゆる出オチに近い。
しかし、アガムスはチャンドラーを信頼していたらしく、「バカな・・・チャンドラーが・・・」とたじろぐが、バカはお前である。それだけ追い詰められていたということでもあろうが、GUTS-SELECTを舐めすぎていたとしか思えない。
ついに身バレ
その後、アガムスは自らテラフェイザーで出撃するのだが、更なるパワーアップをするために大量のスフィアソルジャーを取り込んだことで、記憶障害に陥る。
テラフェイザー
岡部 暁
以前から何度も呟いていた「花、木々、空、風・・・」という言葉は、愛する妻・レリアの口癖だからというだけでなく、スフィアに記憶を奪われていないか、それを確認するための作業だったらしい。しかし、ついにその何よりも大切な記憶さえ消え始める。顔にスフィアの刻印が現れたことも関係しているのだろう。
デッカーに変身したカナタに説得されるアガムスだったが、その言葉に耳を貸すことはなく、戦いを続ける。むしろ、ムキになっているようにさえ見えてしまう。
アスミ カナタ
松本大輝
ウルトラマンデッカー
岩田栄慶
デッカーとテラフェイザーによる戦いは熾烈を極め、最後は相討ちという形で幕を閉じる。
テラフェイザーから放り出されたアガムスに駆け寄り、銃口を向けるリュウモンに、「何ですか、あなた?」と慌てた様子を見せるアガムス。どうやら、先ほどの戦いの衝撃で記憶を失ってしまったらしい。
そしてもう一人。デッカーの変身が解けてしまい、倒れ込むカナタ。完全に気を失っている様子だ。
その姿をも目にしてしまったリュウモンは驚きを隠せない。
ついに身バレしたウルトラマンデッカー。
最終決戦に向け、物語は加速していく。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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