動画配信サイト「TELASA」にて限定配信されている『仮面ライダーセイバー』のスピンオフ作品・剣士列伝「仮面ライダーエスパーダ」をレビュー。
「Behind the chapter 13」と銘打たれていることからもわかるとおり、『仮面ライダーセイバー』第13章「俺は、俺の思いを貫く。」を補完するような内容となっている。
少々辛口になってしまいますが、どうぞ最後までお付き合いください。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストをご紹介します。ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品などもチェックしてみてください。
【スタッフ】
監督:坂本浩一
脚本:金子香緒里
アクション監督:渡辺 淳
特撮監督:佛田 洋
音楽:山下康介
【キャスト】
富加宮賢人/仮面ライダーエスパーダ:青木 瞭
新堂倫太郎:山口貴也
尾上 亮:生島勇輝
須藤芽依:川津明日香
幼い賢人:宮本琉成
タッセル:レ・ロマネスクTOBI
ソフィア:知念里奈
賢人の思い出
本作では、賢人が剣士になった頃のことが描かれている。といっても、ソフィアから雷鳴剣黄雷(ライメイケン・イカヅチ)を渡されるシーンからで、そこに至るまでの経緯は割愛されているため、誰に剣を教えてもらったのか? といったことには一切触れられていない。
剣士になった理由も、「父が組織を裏切った理由を知りたいから」「父が今どこにいるのかを知りたいから」としか描かれない。賢人のことが、わかるようでわからない。わかるのは極度のファザコンだということくらいだ。消化不良を起こしそうな内容である。
短編だから仕方ないという部分もあるとは思うが、『セイバー』は本当に人物の深掘りをしない。本編だけでなくスピンオフでさえこれだ。スピンオフを観たいと思う人たちは、「本編では語られない部分まで知りたい」という欲求の持ち主だろうに、その欲求を満たすことさえしないのはどうかと思ってしまう。
それにしても、無事に剣士になった賢人を激励する尾上に、うっすらと笑みを浮かべて「父が裏切った理由に心当たりはありませんか?」と問いかける賢人には違和感があった。なんだか他人事というか、まるで聞き込みをする刑事みたいな感じだった。演出なのか、演技力の問題なのか、どうにも軽い。軽すぎる。
これを観ないとスピンオフが繋がらない
残念ながら、剣士列伝という、このスピンオフ作品群の中では最も退屈な作品だった。
身を挺して自分を救ってくれた倫太郎を想い、「倫太郎のように強くなりたい」と呟き、仲間たちのため、父のために、闇の力に侵されながらも、一人で決着をつけに行くラストだけはヒーローっぽかったとは思うが、賢人の過去についてガッツリ触れるのかと思いきや、TV本編で触れた以上の情報は皆無。ただ、カリバーにボコられて重傷を負った賢人が、父のことで苦悩する様を延々と見せられるだけだ。
だから、これからこの作品を見てみようかな? 面白いのかな? と迷っている方には、マジでオススメしない。仮面ライダーシリーズが大好きで、もしくはセイバーが大好きで、骨の髄までしゃぶりつくしたいという方にはマストだとは思うが、迷うくらいなら、他の作品を見た方が良い。
ただし「TELASA」は初回登録時のみ、無料お試し期間があるので、それを利用する手はある。剣士列伝自体が全4話でしかなく、それぞれのエピソードは非常に短いので、お試し期間内に視聴することは余裕である。
ひとつ注意点としては、次に控える『仮面ライダーブレイズ』を理解するには、この作品を見ないと話が繋がらない。スピンオフ同士で補完し合うという仕様のため、もしも「エスパーダよりブレイズの方が好き」だとしても、先にブレイズを見てしまうと、ちょっと何言ってるのかわからない、みたいな感じになってしまうのは間違いない。蕎麦の“つなぎ”みたいなものだと諦めて見る他ないのである。
みんなコロナのせい、とばかりは言えない
結構辛辣な意見を書いてきたが、私はスタッフやキャストの皆さんをディスりたいわけではない。面白おかしく小バカにするつもりも毛頭ない。ただ、大好きな仮面ライダーシリーズが、このように落ちぶれる様を嘆いているのだ。
この『セイバー』は、コロナウイルスが猛威を振るう中で企画された初めての仮面ライダーである。
だからこそ、コロナ対策として、従来とは異なる作品に仕立てていることはよくわかる。
しかし、今のこの状態は、本当にコロナのせいだからだろうか? 我が家の話で恐縮だが、『ジオウ』『ゼロワン』で仮面ライダーの世界にどハマりしたウチの息子が、『セイバー』は7話のあたりから全く見なくなってしまった。最初は、華麗な剣戟に興味津々だったが、徐々に物語にも登場人物にも興味を示さなくなり、ついには聖剣ソードライバー(ベルト)を欲しいとも言わなくなった。
実際、「セイバーがつまらない」という評判が横行し始めたのも、このあたりだったように思う(第1章で既につまらないという感想を持っていた人もいるようだが)。
外出(ロケ)を控えるために、スタジオでの撮影が多くなるのはわかる。ゲストを呼びづらい状況なので、仲間を増やして、その中で物語を展開させたいという思惑もわかる。
しかし、人物像を深掘りしなければ、全員モブである。共感しようにも共感できないではないか。
誰のせいだと犯人探しをしたい訳ではないが、薄っぺらい人物設定を基に、スピンオフを任されたスタッフやキャストの苦労が偲ばれる。むしろ、お疲れ様でした、と心から労いたい気持ちでいっぱいである。
エスパーダは、そのデザインを含め、わりと好きなキャラなので期待していたのだが、なんとも残念な結果だったと言わざるを得ない。
これで次の『ブレイズ』で納得の結末が用意されていれば良いのだが、さて、いかがなものか?
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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