「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」で限定配信されている『仮面ライダーセイバー×ゴースト』をレビューする。
最初に言っておくが、この作品は、『仮面ライダーゴースト』のスピンオフ『ゴーストRE:BIRTH 仮面ライダースペクター』を視聴した人でないと、意味がまるで理解できない、という鬼のようなスピンオフ。正確には、『スペクター』の続編的な作品となっている。
歴代ライダーにおけるワースト評価1位と2位の両作品のコラボが、一体どんな化学変化を起こすのか? 見どころに絞ってレビューする。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストをご紹介する。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品もチェックしていただきたい。
【スタッフ】
監督:坂本浩一
脚本:福田卓郎
アクション監督:渡辺 淳
【キャスト】
神山飛羽真/仮面ライダーセイバー:内藤秀一郎
天空寺タケル/仮面ライダーゴースト:西銘 駿
須藤芽依:川津明日香
深海カノン:工藤美桜
ジャベル:聡太郎
ロベス/ガンマスペリオル:北代高士
マラー:桜田航成
カミーユ:輝海
デザストの声:内山昂輝
謎の男:????
タッセル:レ・ロマネスクTOBI
ダントンの遺志を継ぐ者たち
『スペクター』において、究極の生命体を創ろうとしていたダントンの遺志を継ごうとする男たち。
ダントンとは、米米クラブのジェームス小野田さんが演じた、『スペクター』のラスボスである。
劇中でミスター平成ライダー・高岩成二さん演ずるジャイロを一撃で抹殺するという圧倒的な強さを見せつけた。
そのダントンが口ずさんでいた謎のタマゴソングを歌っているが、社歌のようなものなのだろうか? 何故かそこには、いかにも洗脳用と思しきヘッドギアを装着した深海カノンもいる。
男たちはカノンを操って、ダントンの最高傑作・深海マコトを誘き出そうとする。
トチ狂ったデザスト
「お兄ちゃんに会いたい」
呟きながら街を彷徨うカノン。
そこに何故か現れたデザストは、カノンが普通の人間ではなく、自分と同じ創られた存在であることに気づく。
そこまでは良いのだが、「お兄ちゃんに会いたい」と繰り返すカノンに「俺がお兄ちゃんになってやる」と謎の宣言。
カノンに「お前じゃない」と拒否られても執拗に追い回す姿は、単なるストーカーである。
「大天空寺」の面々
『仮面ライダーゴースト』の世界から、今回『セイバー』の世界に登場した懐かしの顔ぶれは、深海カノンだけではない。
主人公・天空寺タケルはもちろんのこと、ジャベルも登場する。
ジャベルよりもタケルの方が当時よりも印象が変わったというのは、髪色の違いだけではなく、少年から大人に変わったということの証なのだろう。
ゴーストに変身して戦うタケルに対し、ジャベルは変身もできず、芽依と一緒にガヤ役に徹する。登場しない御成(おなり)の代わりにお笑い担当を任された様子だ。
おにぎりは、『ゴースト』を見ていた人にはわかるネタ。ファンには懐かしいけれど、一見さんには全く理解できないだろう。
セイバー新フォーム
スピンオフのお楽しみである新フォームが本作にも登場する。
その名も、「仮面ライダーセイバー ゴースト偉人録」。
「ゴースト偉人録ワンダーライドブック」を使い変身する。
このブックは、大天空寺にちょっと変わった経本のような存在として伝えられてきたような描かれ方をしている。
ガンマスペリオルに全く歯が立たないセイバーに、「ガンマのテクノロジーにはガンマのテクノロジー以外では傷をつけられない」とジャベルが助言したことを受け、タケルが飛羽真にブックを渡す。
「かつて、歴史に生きた偉人の魂を、その身に宿し、命を燃やす!」という大塚明夫ボイスと共に変身。
ゴーストよろしくフードを被っているが、額の真ん中に突起があるデザインという共通項のためか、全く違和感がない。
ゴーストは「グレイトフル魂」にフォームチェンジし、ダブルライダーキックで敵にトドメを刺す。
これはいつものお約束ではあるが、燃える王道展開に消費期限はないはずだ。
荒ぶるカノンは拝めるが・・・
本作最大の見どころは、はじめから最後まで、何かと荒ぶるカノンである。
なんというか、これを見せたいがための作品なのか? と思ってしまうほどに荒ぶっている。
「カノンちゃん、踏んでください!」とか「ボクもみぞおちに膝をください!」といった歪んだ欲望に駆られた人たちのための作品にしか見えない。
名作と言われた『スペクター』は、自らが人造人間であることを知り苦悩する深海マコトに、同じ人造人間たちを手にかけるという同族殺しをさせて見せ、ついには自分を創り上げたダントンにトドメを刺すという親殺しまで描き切った問題作である。
あれほどイロモノ扱いされた『ゴースト』のスピンオフが、あんなにも仮面ライダーらしい作品になるとは誰が予想しただろう。
しかし、その名作の続編という重責をも担った『セイバー×ゴースト』は、ただのコラボ祭りでしかなかった。とりあえず異なる世界観のライダーが共闘するのは見どころだが、それ意外では、やはり荒ぶるカノンしか思い浮かばない。
荒ぶるカノンを止めようと身を呈する飛羽真もまた、手刀で身体をぶっ刺されるという痛手を負う。
しかし、それでも「一緒にお兄ちゃんを探そう」と無理に微笑む飛羽真にはちょっと引く。ドMか?
それにしても、キャラクターは『セイバー』がメインとなっているのに、物語は『ゴースト』のスピンオフの流れを汲んでいるというチグハグ感が際立ち、無理矢理コラボさせた感が溢れ出ている。
これなら、先に配信開始された『仮面ライダーゲンムズ』の方が違和感はなかった。
ラストはカノンが連れ去られるという、完全に続編があることを匂わせて幕を閉じる。
ファミコンソフト『悪魔城ドラキュラⅡ』のエンディングくらい露骨でモヤっとする。
続編は同じくTTFC限定配信となる『仮面ライダースペクター×ブレイズ』。気になる続編のレビューはこちら↓
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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