「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」で限定配信されている『仮面ライダーセイバー』と『仮面ライダーゴースト』のコラボ作品『仮面ライダーセイバー×ゴースト』の続編が本作。
「匂わせ」どころか、鼻の穴に芳香剤を突き刺すくらいのラストシーンだったので、意外でもなんでもないのだが、2つの作品の2号ライダー同士の競演であり、そもそも『セイバー×ゴースト』は、スペクターが主役を務めた名作『ゴーストRE:BIRTH 仮面ライダースペクター』の続編である。むしろこちらが本命のはずだ。
20分足らずの短編だが、見どころを中心にレビューする。最後までお付き合いください。
スタッフ・キャスト
ここでは主要スタッフとキャストをご紹介します。
ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておきますので、他の参加作品も是非チェックしてみてください。
【スタッフ】
監督:坂本浩一
脚本:福田卓郎
アクション監督:渡辺 淳
【キャスト】
深海マコト/仮面ライダースペクター:山本涼介
深海カノン/仮面ライダーカノンスペクター:工藤美桜
新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズ:山口貴也
神山飛羽真:内藤秀一郎
天空寺タケル:西銘 駿
須藤芽依:川津明日香
マラー/ガンマウルティマ:桜田航成
カミーユ/ガンマスペリオル:輝海
デザストの声:内山昂輝
謎の男:高橋ヒロム(新日本プロレス)
タッセル:レ・ロマネスクTOBI
【主題歌】
「我ら思う、故に我ら在り」作詞・作曲:綾小路翔 編曲:木内健 歌:氣志團
新ライダー・カノンスペクター登場
本作最大の見どころとなるのが、カノンが変身する新ライダー。
変身音声は「カイガン!スペシャル!行こう!サイコー!スペシャルなゴースト!」とそのまんまだ。ボイスはお馴染みm.c.A.Tだ。ボンバへ♪
「カノンスペクター」というネーミングには、もう一捻り欲しかったが、色違いのスペクター。スーツアクターは宮澤雪さん。青いスペクターに対し、ピンクのスペクターとは、なんだかスライムベスみたいである。スライムベスはピンクではないけれど。
そんな見た目はともかく、いざバトルになると、あの兄に守ってもらうだけだった以前の弱々しいカノンの姿はどこにもない。キラメイピンクとして1年間戦い続けた成果なのか、まさかの蟷螂拳(トウロウケン)の使い手となっていた。
「バーチャファイター2」に100円玉を注ぎ込んだ日々が懐かしい。
究極の生命体を目指して
相変わらず崇拝するダントンが口ずさんでいた気持ちの悪い歌を歌うマラーとカミーユ。
薄暗い部屋で、男二人が虚ろな目でこんな陰気な歌を歌う様子はそれだけでちょっとしたホラーである。
この二人の目的は、カノンを餌に、兄・深海マコトを誘き出し、吸収して究極の生命体になることだった。なんだかドラゴンボールの「セル」みたいである。
カノンと倫太郎の前に現れた二人は、変身して襲いかかってくる。
戦いの中、4人のカノン(クローン)を吸収し、ガンマウルティマへと進化を遂げるマラー。
やっぱりどこかセルみたいな雰囲気にも見える。
ブレイズ新フォーム「スペクター激昂戦記」
そしてもう一つの見どころは、ブレイズの新フォーム「スペクター激昂戦記」だ。
カノンたちを救うために現れたマコトから渡されたライドブックを使って変身する。
マコトは唐突に現れたタッセルから貰ったらしい。知らない人から何か貰ってはいけません。ましてやそれを誰かにあげるなど。
変身音声は「とある兄貴が激昂の末に紫炎をまとう戦いの歴史・・・」というもの。なんだか身も蓋もない言い方である。
デザインモチーフはディープスペクター。
「ゴースト偉人録」もそうだったが、ブレイズもフードを被っても違和感がない。
ただし、このブレイズの新フォームは、基本的に剣で戦う『セイバー』のセオリーを破り、パンチもかなり使う。これは結構新鮮である。
久々登場のスペクターも含め、3人のライダーの共闘シーンも見どころだ。ちなみにスペクターは、今ではアクション監督を務めている渡辺淳さんがスーツアクターも兼任している。
途中、マコトはシンスペクターへとフォームチェンジ。
先ほど吸収された4人のカノン(クローン)を救出する。吸収したものを吐き出すところなど、やはりセルを思い出さずにはいられない。
カノンがいっぱいだ〜
「カノンがいっぱいだ〜」
クローンのカノンたちを前に、満面の笑みで手を振るマコト。完全にヤベエ奴だ。心なしか、倫太郎の笑顔も冷ややかに見える。
しかし『セイバー』の神代兄妹といい、『ゴースト』の深海兄妹といい、製作スタッフはブラコン、シスコンに強いこだわりでもあるのだろうか? それとも両作品のメインライター・福田卓郎さんの趣味なのだろうか。いずれにせよ、兄妹愛とか家族愛といったレベルを超越している。このままパロディとしてA◯にされそうな雰囲気さえある。
このセリフひとつでイケメン台無し。しかし、Twitterなどでネタにされたりしているのを見ると、ただただバカにされているわけではなく、愛されてる感も伝わってくる。
そもそも、TTFC会員しか見られないスピンオフを結構な数の人たちが見ているという事実だけでも凄いことだと思うし、それも大半は倫太郎目当てというよりも、マコト目当てで視聴しているはずだ(倫太郎が不人気というわけではない)。5年も前に完結したシリーズの登場人物目当てにだ。
だから、ファンのための作品としてみれば、こういうのは全然アリだろう。倫太郎をド天然キャラとして扱いながらも、最後は家族の話で締め括るなど、短編ながらまとまりは良い。
ただし、純粋に『ゴーストRE:BIRTH 仮面ライダースペクター』の続編として見ようとすれば、限りなくガッカリする。勿体ぶったわりには、ただダントンを盲信する連中の残党狩りをしたに過ぎないからだ。
謎の男が最後まで怪しげな動きをしているので、また続きがあるのか? とも思ったが、残党は全て倒したので、これ以上「究極の生命体」ネタを続けることは難しそうである。
アランと賢人という3号ライダーの競演というのも見てみたい気はするが、実現する可能性は限りなく低そうだ。あまり期待はしないでおこう。
それにしても、コラボしたブレイズ/倫太郎の影が薄すぎて泣ける。ただのド天然男。ネタキャラとしてしか使われていないため、新フォームが登場したこと以外、ほぼ印象に残らない。2号ライダーがこの程度の扱いになってしまうところにも『セイバー』の問題はあるように思うのだ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。