『dビデオスペシャル 仮面ライダー4号』をレビューする。
結論から言えば、隠れた名作である。
マニア向けとか、イロモノとか、そういった先入観なしに一度見て欲しい。
実は、名作の評判も高い、あの某平成ライダーの完結編でもあるのだ。
最後までおつきあいいただければ幸いである。
スタッフ・キャスト
ここでは、主要スタッフとキャストを紹介する。ウィキペディアに記載のある方についてはリンクを貼っておくので、他の参加作品も是非チェックしていただきたい。
【スタッフ】
監督:山口恭平
脚本:毛利亘宏
アクション監督:宮崎 剛
特撮監督:佛田 洋
【キャスト】
泊 進ノ介(トマリ シンノスケ)/仮面ライダードライブ:竹内涼真
詩島霧子(シジマ キリコ):内田理央
詩島 剛(シジマ ゴウ)/仮面ライダーマッハ:稲葉 友
乾 巧(イヌイ タクミ)/仮面ライダーファイズ:半田健人
桜井侑斗(サクライ ユウト)/仮面ライダーゼロノス:中村優一
海堂直也(カイドウ ナオヤ)/スネークオルフェノク:唐橋 充
チーターカタツムリの声:井俣太良
ベルトさんの声:クリス・ペプラー
デネブの声:大塚芳忠
アリマンモス/首領の声:関 智一
ヒルカメレオンの声:小柳良寛
仮面ライダー4号の声:松岡 充
まるで『シュタインズゲート』
『シュタインズゲート』という作品をご存知だろうか? 元々は、家庭用ゲーム機「Xbox360」専用ソフトとして発表されたADVゲームで、後に他ハードでも発売され、アニメ化もされた。
その後も様々なスピンオフ作品や小説を発表し続けており、5pb.(現・MAGES.)というメーカーが躍進するキッカケにもなった大人気作であり、かくいう私も大ファンである。
どういう作品か知らない方のために、簡単に説明してみる。
身も蓋もない言い方をすれば、「ギャルゲー(かわいい女の子とイチャイチャするゲーム)」である。
しかし、私は断じてそういう作品のファンではなかったし、どちらかと言えば、そういう作品を好んでプレイする人たちの気持ちがわからなかった方だ。
そんな私でさえハマったのは、そのシナリオゆえである。
Amazonで何か面白そうなゲームを探して徘徊していた私が、たまたま目にした『シュタインズゲート』は、やけに評価の高いギャルゲーにしか見えなかったのだが、それにしてもレビュー数が多い。ギャルゲーなんてものは、一部の好事家向けのジャンルだとばかり思っていたのだが、レビューを眺めていると、どうもそういう人たち以外にも高く支持されているように見受けられた。要するに、レビュアーの方々の熱量に圧倒されたのである。
他にめぼしい作品もなかったし、ゲームに対する熱が冷めかけていた頃でもあったので、一種の賭けのような気分で購入してみることにした。合わなければ、中古屋に売ればいい。そんな軽い気持ちでポチってみたのだが、これがまあ、予想を覆してみごとにハマった。
タイムリープをテーマにしたシナリオは、緻密のひとこと。
前置きが異常に長いのが難点ではあるし、クセが強いなんて言葉では生ぬるいほど”鬱陶しい”登場人物たちに面食らう。
この最初の難関を乗り越えられるかどうかだけが、このゲームにハマるかどうかの境界線だ。
私は、冒頭で面倒くさくなって何度も挫折しかけたし、キャラクターの設定もデザインもイマイチ好みではなかったにも関わらず、「せっかく買ったんだから、手放す前に1回はクリアしておこう(本作はマルチエンディングで、コンプするには何度もクリアしなければならない)」というセコい理由で、しぶしぶ進めていったのだが、あるポイントを超えた途端、下りの階段が、急にすべり台に変わったかのように、ものすごい勢いでハマってしまった。好きではなかったキャラクターたちまで大好きになった。
そうして気がつけば、全ての要素をコンプして、トゥルーエンディングでは涙まで流していた。
そんな歴史的名作『シュタインズゲート』に、この作品はどこか似ている。
実際に影響を受けているかはわからないけれども、2015年という発表時期を考えると、脚本家の毛利さんも『シュタインズゲート』を知らなかったとは言えないはずだ(『シュタインズゲート』は2009年発売、2011年にアニメ化)。
”大切な人の命を救いたい”という想いで、幾度もタイムリープを繰り返すというストーリー展開が、まさにそれ。最近では、『東京卍リベンジャーズ』が当てはまるだろう。
だけれど、パクってる、なんていうつもりはなくて、「仮面ライダー」という作品に連綿と流れる“切なさ”みたいなものを、上手く消化したシナリオであり、とても素晴らしいと思う。
少なくとも私は、この作品の前日譚である『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』より、こちらの方が好みだ。
仮面パイロット?
本作で登場する「仮面ライダー4号」は、顔だけみると、「3号」に似た雰囲気を持ちながらも、人間の口元を再現していて、本家4号である「ライダーマン」を少し意識しているように思える。
ゴジラに対するメカゴジラみたいなもので、メカライダーマン?
ただしそれは顔だけの話で、身体は仮面ライダーというよりは、空軍のような雰囲気。
それもそのはず。愛機はまさかのプロペラ爆撃機である。その名も「スカイサイクロン」。
これを見たら、そのうち飛行機乗りの仮面ライダーTVシリーズが始まってもおかしくないなと思ってしまった。
もう、「ライダー」という単語は、本来の意味をなしていないのだ。
CVの松岡充さんは、『W』のエターナルに続き、二人目のライダーの声を担当した事になる。
声
「声」と言えば、ショッカー首領の声をやっている関智一さんがマジで凄い。
そもそも、初代仮面ライダーでは名優・納谷悟朗さん(ルパン三世の銭形警部や宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長などを担当)が声を当てていたショッカー首領だが、納谷さんが2013年にお亡くなりになられたため、本作では関さんが声を当てている。
これが、いい感じでショッカー首領なのだ。
若い頃のまま、というわけではなく、わりと最近の、それなりにお歳を召されてからの納谷さんの声に近い雰囲気なので、前情報を知らずに観たら、おそらく納谷さんでないとは思わないのではないか。
関さんは、先述した『シュタインズゲート』でも橋田至(通称:ダル)の声を当てているが、まるで違う声なので、こちらも併せて聞いて欲しい。
声優さんの凄さを垣間見る思いがする。
実質的には『555(ファイズ)』完結編
本作が配信されたのは、『仮面ライダードライブ』の放映時期であり、物語も竹内涼真さんたちを中心として展開されるため、『ドライブ』の外伝的な内容だと思われがちだ。前作『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』は、確かにそうだったが、本作はまるで違う。
実質的には、『仮面ライダー555(ファイズ)』の完結編的内容となっている。
大人気の『電王』から、桜井侑斗/ゼロノスとデネブも参戦しているが、今回は純粋に脇を固めている。
当ブログでは、「ネタバレあり」としながらも、視聴する楽しみは奪わない程度に抑えたいと思っているので、詳しくは書かないが、『555(ファイズ)』ファンは必見である。
なかなかに切なく、それでいてとても清々しい物語となっており、後味は悪くない。
歴代ライダーの中でも人気の高い『555(ファイズ)』を10年も経ってから引っ張り出してきて、「堂々の完結編!」なんていうのは、なんとも野暮ったい。あえてそうは名乗らず、ひっそりと完結させたのは大正解だったと思う。
”人類の革新”としながらも、日陰者としてしか生きられなかったオルフェノクの始末のつけ方としても、ふさわしかった。
とはいえ、表向きのメインは『ドライブ』である。ひとっ走り付き合わされるのはお約束。
ベルトさんのイケボでJ-WAVEを聴きたくもなるし、マッハのちょいダサ感に癒されるのもお約束だ。
竹内涼真さん見たさでも視聴しようと、内田理央さん目当てで視聴しようと損はしないだろう。内田さんはいつものミニスカポリスではなく、普段着っぽい衣装での登場となるので、それを残念に思う人はいるかも知れないが。
TTFC(東映特撮ファンクラブ)会員なら、490円(税込)で30日間視聴可能だ。
名作を裏切らないラストシーンは、是非ともファンを自認する人にこそ見てもらいたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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