2021年9月5日放送『仮面ライダーリバイス』第1話「家族!契約!悪魔ささやく!」(監督:柴﨑貴行 脚本:木下半太)をレビュー
仮面ライダー生誕50周年というメモリアルイヤー2021年の9月5日、ついに令和第3弾となる新ライダー『リバイス』の放映が始まった。
メモリアルイヤーの作品だからこそ、という期待に加え、前作『セイバー』が仮面ライダー史上最低の評価を叩き出したことで、ファンの「仮面ライダー」への渇望は極限に達していると言っても良い。
東映も、そんな期待を受けて、ということなのか、恒例の夏映画では『リバイス』をチラ見せするどころか、TV本編1話分ほどのボリュームの同時上映作で、本編開始前に異例のデビューをさせてしまう。
「悪魔と契約するライダー」という、ダークヒーローへの原点回帰を匂わせながらも、パステルカラーのポップなデザインや、ギャグ要素多めの明るい作風に否定的な声も多い。
『セイバー』最終回後に『リバイス』への繋ぎとして放映された「増刊号」でも、映画で見せた以上の期待感を煽るようなものは一切出てこなかったため、さらに不安を募らせている人もいるだろう。
さて、それでは本編はどんなものだったのだろうか? 第1話「家族!契約!悪魔ささやく!」の見どころを中心に、忖度なく感じたままにレビュー。最後までおつきあいいただければ幸いだ。
スタッフ・キャスト
まずは主要スタッフとキャストをご紹介する。ウィキペディアに記載のある方はリンクを貼っておくので、是非、他の参加作品などもチェックしていただきたい。
【スタッフ】
監督:柴﨑貴行
脚本:木下半太
アクション監督:渡辺 淳
特撮監督:佛田 洋
音楽:中川幸太郎
【キャスト】
五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ:前田拳太郎
バイス/仮面ライダーバイスの声:木村 昴
五十嵐大二:日向 亘
五十嵐さくら:井本彩花
ジョージ・狩崎:濱尾ノリタカ
アギレラ:浅倉唯
フリオ:八条院蔵人
オルテカ:関 隼汰
門田ヒロミ:小松準弥
牛島 光:奥 智哉
伊良部正造:西郷 豊
原田智之:鈴木みのる
考古学者:H D
隊長:鬼倉龍大
アナウンサー:安藤聡海
若林優次郎:田邊和也
牛島太助:矢柴俊博
五十嵐幸実:映美くらら
五十嵐元太:戸次重幸
【主題歌】
「liveDevil」Da-ice feat.木村昴
作詞:藤林聖子 作曲:MUSOH /STEVEN LEE /SLIPKID /花村想太 編曲:STEVEN LEE Add Arangement:Hiroyuki Fujino
デッドマンズとフェニックス
50年前、中南米の遺跡で発見された、己の中の悪魔との契約印バイスタンプ。中南米ということで、アステカ文明が思い浮かぶが、こうした古代の遺物といった設定はありがちだが、ミステリアスな雰囲気はやはり最高だ。
『ジョジョの奇妙な冒険』も、はじまりはアステカだったな、と考えると、『リバイス』の悪魔と共に戦うという設定も、なんだかスタンドっぽく見えてくるが、別にパクってるなんて野暮なことを言うつもりはない。スタンドとは異なり、実体化した上に意思もある悪魔との共闘が今後どうなっていくのか純粋に楽しみである。
劇中で、そのバイスタンプを悪用し、「ギフ」という悪魔の復活を企むのが、「デッドマンズ」という悪魔崇拝組織であり、その中心となっているのは、アギレラ、オルテカ、フリオという、やはり中南米系の名前を持つ3人である。特にアギレラは、「ギフの許嫁(いいなづけ)」と呼ばれていることからも、劇中では超重要な役どころであることが窺える。
そして、デッドマンズに対抗するために立ち上げられたのが「フェニックス」という組織である。
フェニックスでは、天才科学者ジョージ・狩崎が、デッドマンズの生み出す悪魔に対抗するためのシステムを開発していた。ジョージ・狩崎は、亡き父が30年前にバイスタンプを開発したという天才の血筋であり、今回の騒動に深い因縁のある人物である。
その彼が開発しているのが、悪魔の力を制御する新たなライダーシステムだった。目には目を。悪魔には悪魔を、という理屈である。
初変身
主人公・五十嵐一輝は、「しあわせ湯」という昭和の風情が残る銭湯の長男。
元々はプロサッカー選手を目指していたようで、毎朝、キング・三浦知良選手のポスターに挨拶をしている。
弟・大二との会話から察するに、一輝のサッカーの腕前はかなりのものだったようだ。銭湯の掃除中にも風呂桶をリフティングしたりしていることから、まだまだ未練はありそう。そんな夢を諦めてまで銭湯を手伝っているあたりに、一輝の抱える薄暗い何かがありそうだ。
それが原因なのかは不明だが、最近、どこかから聞こえる声に悩まされているらしい。そして、ついにはその声の正体まで見えるようになってしまう。
こんなもんがいきなり目の前に現れたら、誰だって腰を抜かすに違いない。
そんなある日、フェニックスに入隊した弟・大二が、隊長に任命されることになるのだが、その任命式にデッドマンズが現れ、会場はめちゃくちゃに破壊されてしまう。
フェニックスの門田ヒロミは、その窮地を救うため、完成したばかりのライダーシステム「リバイスドライバー」を使おうと試みるが、ジョージ・狩崎の「キミに悪魔は飼い慣らせない」という言葉どおり、ドライバーに拒絶され、さらに悪魔をもう1体生み出すという最悪の事態を招いてしまう。
リバイスドライバーの適応者として選ばれていた大二は、ドライバーを手にするも、先ほどのヒロミの姿が頭から離れず、変身することができない。期待のルーキーだが、ビビリのようである。これで隊長が務まるのか心配になるレベル。
すくみ上がって動けない弟に加え、母・幸実も悪魔に襲われる。必死で抵抗する一輝に、悪魔が囁く。
自分と契約しろ、と。悪魔に魂を売れ、と。そうしたら、自分があの悪魔たちを蹴散らしてやる、と。家族を守りたい一心でバイスタンプを自らに押し、悪魔を解き放つ一輝。
実体化した悪魔の攻撃力は凄まじく、デッドマンズの悪魔2体を圧倒する。
パンチで顔がひしゃげ、遥か彼方にぶっ飛ぶデッドマンズの悪魔。着ぐるみの柔らかさを上手く使って、パンチの威力を示している。迫力あるバトルシーンだ。
そのままデッドマンズを蹴散らすかと思われた悪魔だが、あろうことか、倒れている母・幸実を襲う。食べるつもりらしい。必死で悪魔を止めようと駆け寄る一輝に「リバイスドライバーを使えば、悪魔を制御できる」とアドバイスするジョージ・狩崎。一輝がドライバーを身につけた途端、悪魔は一輝の中へと姿を消す。
そして初変身。一輝を演じる前田拳太郎さんは、この第1話から既にヒーローらしい気合みなぎる表情を見せてくれる。
「オーイング!ショーニング!ローリング!ゴーイング!仮面ライダー!リバイ!バイス!リバイス!」
オリラジ・藤森さんのボイスが轟く中、一輝と悪魔が変身を遂げる。スタンプでの変身だけに、「押印」「承認」といった言葉が並ぶ。しかし、こんな変身ボイスでも鳥肌が立つ。音だけ聞いてたら、そんなダジャレみたいな文言なんてどうでもいい。ただただカッコいい。一輝の「家族を守りたい」という必死の想いに胸が熱くなる。激しく燃える初変身シーンである。
熱い初変身といえば、『ゼロワン』も印象深かったが、『リバイス』も決して負けていない。
初バトル
二人のライダーの共闘が第1話から見られるのは、今回が初。
前作『セイバー』でも、2号ライダー役の新堂倫太郎は第1話から登場していたが、変身したのは第2話である。
『リバイス』がデビューした映画では、伸びた尻尾で敵を薙ぎ払うとか、2人が合体するといったCGがふんだんに使われていて、こんなのばかりだと個人的には盛り下がるなと心配していたが、今回はライダーらしい格闘戦を存分に楽しめる。
蹴り飛ばした敵が壁を突き破り、回し蹴りで捉えた敵が、背後のブロックと共に吹き飛ぶ。それも、被り物まで吹っ飛んでいるように見える(実際には吹き飛んではいない。壁の破片がそう見えただけ)。抜群の破壊力がこれでもかと強調される。これだよこれ!と喝采を送りたくなる。
ミニチュアの街をバックに、巨大怪獣や宇宙人らと光線技を駆使して戦う『ウルトラマン』シリーズとは違い、等身大で戦う仮面ライダーには、スピード感あふれる格闘戦こそが相応しいし、バトルシーンにおける最大の魅力であると思っている。
『リバイス』は『ゼロワン』にも通ずるような、筋肉質なデザインから想像していたとおりの華麗な格闘戦を見せてくれた。特に、バイスの背中を利用して飛び上がり、回転しながら敵に斬りかかるシーンにはシビれて憧れた。
ラストも、ダブルライダーキックでキメ。2体の悪魔に、それぞれ同時にトドメを刺す。しかも、足の裏で敵を捉えた後で、スタンプを押すようにドン!と蹴り出す。蹴られた敵は隕石の如く一直線に地面に激突して爆発する。めちゃくちゃカッコいいじゃあないか。
次週登場予定のリバイとバイスの合体攻撃(CG)なんて要らないから、ずっとこの感じでやって欲しいと個人的には強く思う。
家族の物語
最後の見どころは、ジョージ・狩崎である。
所々に英語を交える喋り方は、ちょっぴりルー大柴みたいだが、「ライダーオタク」という、ありそうでなかった属性の持ち主である。
演じている濱尾ノリタカさん自身も、お父さんがガチのライダーオタクということで、その影響をモロに受けまくった方らしい。ライダー好きなら嫌いになる理由がない。私も全力で推していきたい。
といったところで、そろそろ1話を見た感想をまとめよう。
『リバイス』はかつてないほど、「家族」をテーマにした仮面ライダーである。どのライダーも、いつもどこかに「家族」というものはあったけれど、ここまで「家族」を全面に推し出してきたライダーはいなかった。
主人公・一輝の五十嵐一家がその中心であることはもちろんだが、ジョージ・狩崎もバイスタンプを生み出した亡き父の遺志を受け継ごうとしていることから、やはり家族というものに対する想いは強いはずだ。
「家族」と「悪魔」。
人間にとって、切っても切れない、これらの要素を1年間という限られた時間の中でどのように描いていくのか、本当に興味は尽きない。
始まったばかりなので、今後どうなるかはわからないが、それでもこの第1話は十分以上に成功だった。こんなに何度も見たくなる第1話は滅多にない。東映特撮YouTube公式チャンネルでも第1話を見ることができるが、この記事を執筆している2021年9月5日19:00現在、再生回数は26万回となっている。評価も概ね好評の様子。それも当然だろう。
設定はわかりやすく共感もしやすいし、バトルシーンはカッコいい。それでいて、今後のストーリー展開においては様々な可能性が潜んでいることも窺える。さらに驚愕なのは、既にキャラクターが立っていることである。第1話にしてキャラクターそれぞれの個性がここまで伝わってくることは稀有である。スピード感もありつつ、これだけ各キャラクターのカラーまで浮かび上がらせる脚本の素晴らしさが光る。
先週の『セイバー』増刊号では、一輝とバイスによるちょっとウザめな掛け合いばかりが目立ちすぎて、これ本当に大丈夫か? と不安になるほどだったが、やはり本編ではライダーらしく、きちんとシリアスな部分も描かれており、好感が持てた。むしろ、本編で好感を爆上げするために、これまではあえて面白そうな要素は見せないようにしていたんじゃないかと思うほどだった。ギャップ萌えを意識していたのなら、大成功である。
とにかく『リバイス』第1話は、『セイバー』で多くの人が感じていたフラストレーションを一気に吹き飛ばすほどの快作の予感がみなぎっている。スタッフ、キャストの皆さんには、こんなご時世だからこそ、健康に留意して最後までフルスロットルで駆け抜けて欲しい。みんなで精一杯のエールを送り続けよう。
ちなみに、ゲノム(フォーム)チェンジに用いるバイスタンプは全部で20種類あるようだ。
どうか、おもちゃ優先で、ほとんど使い所のないゲノムばかりになりませんように。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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