「お前がいるから、あいつが迷うんだ!」
蓮を想うがあまり、飛羽真に斬りかかったデザストは、カリュブディスに喰われた際、自らのコアである本を破壊されたせいで自己再生能力を著しく失っていた。
飛羽真に斬られた傷が治らないデザストを蓮はたまたま見かけてしまう。
「何も残せなかったな・・・」
自らの限界を知り、一人呟くデザストに、蓮は何を想うのか。
第43章「激突、存在する価値」(監督:上堀内佳寿也 脚本:福田卓郎)をレビュー。
ネタバレはするが、これから視聴する楽しみは奪わない程度に止めているつもり。どうぞ、最後までお付き合いください。
キャスト
ここではキャストをご紹介します。
【キャスト】
神山飛羽真/仮面ライダーセイバー:内藤秀一郎
新堂倫太郎:山口貴也
須藤芽依:川津明日香
富加宮賢人:青木 瞭
尾上 亮:生島勇輝
緋道 蓮/仮面ライダー剣斬:富樫慧士
大秦寺哲雄:岡 宏明
ユーリ:市川知宏
神代玲花/仮面ライダーサーベラ:アンジェラ芽衣
神代凌牙/仮面ライダーデュランダル:庄野崎 謙
ルナ:岡本望来
ストリウス:古屋呂敏
デザストの声:内山昂輝
カリュブディスの声:岩崎諒太
ソフィア:知念里奈
存在すること、そのものが価値
デザストの死期を悟り、自らの手で始末をつけようと決意する蓮。
しかしデザストは強力だ。蓮は押され、ふと頭に浮かんだ倫太郎の剣技を真似てみたりもするが、デザストには「そりゃねえだろ」と一蹴される。
自らの在り方に迷い続ける蓮を見て、もどかしさを感じるデザスト。
「もういい。俺がお前を終わらせてやる」と、とどめの一撃を繰り出す。
その瞬間、蓮の頭をよぎったのは、以前、デザストにかけられた一言。
「強さの果てを見たくないか?」
死を覚悟した蓮の身体が瞬時に反応する。
「俺は・・・見てみたい。だから、このままじゃ終われない」
無我夢中で剣を振るう蓮に「お前らしくなってきたじゃねえか」と微笑むデザスト。
「お前じゃない!俺は、緋道 蓮だ!」
「俺は・・・デザストだ」
お互いに最後の名乗りをあげる二人。
斬られても斬られても、「もっともっと感じさせろ!」と何度も立ち上がるデザストに、「俺の全存在をかけて、お前を倒す」という蓮。
その一言にむせび泣くデザスト。
「来いよーっ!!」
涙を振り切るようなデザストの雄叫びから二人の戦いはクライマックスへ。
「ったく・・・お前になんか声かけるんじゃなかったぜ」と呟くデザスト。
「お前となんか出会わなきゃ良かった・・・」と返す蓮。
「もう会わねえよ!!」
と叫ぶデザストの剣を払い、そのまま返す刀でデザストにとどめを刺す蓮だが、一瞬、振り下ろすのを躊躇うように見える。
そこに二人の関係性が垣間見えて、なんだかグッとくる。
消滅する間際、「お前はそのままでいいんだよ・・・」と、蓮のありのままの存在を肯定するデザスト。
人は誰もが自らの存在意義を知りたがり、存在価値を求めるが、在るだけで意義があり、価値がある。
自分探しもいいけれど、何者かになろうとするのではなく、自らが存在しているという事実を認めることこそが最も大事なことなのだと、この二人が身をもって教えてくれた。
最終回はまだなので断言は避けるが、おそらく、『セイバー』のベストバウトはこの一戦となるだろう。
スーツアクターのお二人の演技はもちろんだが、このシーンにおいては、デザストの声を演じる内山昂輝さんの演技が光りまくっている。
『セイバー』で初めて泣けた。
ここでは事細かにシーンの解説をしてしまったが、この迫力を文字で伝え切ることはできない。
是が非でも、実際の映像で確認して欲しい。
そして、内山昂輝さんが主演した「ガンダムUC」も見て欲しい。
ちなみに、自らが消滅してしまう寸前まで蓮のことを気にかけていたデザストと、モモタロスがなんとなく重なった。モモタロスは消滅していないけれど。
カリュブディスの正しい使い方
飛羽真と、神代兄妹の3人は、ストリウスの根城を発見する。
そこには、ストリウスだけでなく、秘術で生み出されたソフィアそっくりの人工生命体と、倒したはずのカリュブディスもいた。
ストリウスたちの手によって本にされた人たちも数多くいたが、カリュブディスはそれら全てを飲み込み、さらにソフィアのような女性も飲み込んでしまう。
あの女性は何のために登場したのか、その意義を疑うほどの急展開。先ほどの蓮とデザストのバトルが素晴らしかっただけに、またいつもどおりの『セイバー』的な流れの早さに戸惑いを覚える。
飲み込まれた人々を救うため、カリュブディスに戦いを挑む飛羽真たち。
しかし、攻撃まで飲み込んで自分のものとしてしまうカリュブディスに苦戦する。
戦いの最中、「今です!」と叫んだストリウスを、ガブリと飲み込むカリュブディス。
え? まさかのカリュブディスがラスボス? 目を疑うような”どんでん返し”だと思われたが、そのカリュブディスの殻を破り、中から現れたのは、なんとストリウス。
その手には、バラバラだった5冊が1冊にまとめられた全知全能の書。
これこそが、食べたものの力を取り込むカリュブディスの正しい使い方だったのか? 2つの世界をつなぐ存在(ソフィア)も、全知全能の書も、本にした人々の力も手に入れたということなのか?
いろんなものを混ぜ合わせた”スムージー”みたいな感じだが、いよいよ真のラスボスが誕生するのだろう。
全知全能の書も、ワンダーライドブックのようなので、最後のライダーが生まれるのだろうか?
それとも、飛羽真の本に新たに生まれたページのように、魔王のような存在が生まれるのだろうか?
興味は尽きないが、それはまた後のお楽しみだ。
スピンオフと特別章の誤った使い方
さて、次回はいよいよラスボスの登場か、と思いきや、まさかの特別章である。
『ゼンカイジャー』とのコラボ。
7月22日に公開される劇場版『スーパーヒーロー戦記』を記念してのものらしいが、正直、このタイミングで?? という疑問が大いに残る。
仮面ライダー50周年とスーパー戦隊45周年が重なるというビッグイヤーなのはわかるし、もちろん応援したい気持ちもあるが、最終盤のクライマックス目前で、この展開には違和感しかない。
『セイバー』があと何章で結末を迎えるのかはわからないが、今の展開からすれば、確かに余裕はありそうだ。
しかし、せめて今回のエピソードよりも手前で入れる、くらいのことはできたはずである。
それと、今回の最大の見どころだった蓮とデザストの決戦の最中に登場した、デザストの「強さの果てを見たくないか?」というセリフは、スピンオフでのみ語られたものである。
しかも、そのスピンオフは、有料動画配信サービス”TELASA”で独占配信されているものなのだ。
そこまで見ている人にとっては、「あの伏線が、ここで回収されるのか・・・!」という想いもあるかもしれないが、本編しか見ていない人たち(特に子供たち)には、「?????」と『ドラゴンボール』の感嘆符ばりに疑問符が残るシーンだったのではないか?
しかも、スピンオフのラストで、蓮の靴ひもが切れて「縁起悪っ!」と呟くシーンもあるのだが、これも、既にこの別れの時を予感させる伏線であったことは間違いないだろう。
スピンオフは、本編を存分に楽しんだ後で、さらに本編では語られなかったエピソードを楽しませてもらうものだと思っている。
間違っても、本編を理解するのに必要だった要素をバラ売りするためのものではないと思う。
残念ながら、仮面ライダーシリーズには、こういうことが時々あるのだが、”エモーショナルドラゴン”や”バハト”には目を瞑ったとしても、さすがにこの件は、ちょっとどうかと思う。今回の蓮とデザストのエピソードが素晴らしかっただけに、残念さが際立ってしまう。
とはいえ、私もライダーファンの一人として『セイバー』を応援する気持ちに変わりはないし、今回のエピソードが『セイバー』史上屈指のものであることは間違いない。最後の余韻も最高だ。
『セイバー』という物語自体にも素晴らしい結末を期待して、また次回を楽しみに待ちたい。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。